
オリーブの特徴や種類の選び方。目的別のおすすめ品種9選

オリーブは古くから世界中で栽培されている樹木です。たくさんの種類があり、観賞用としても楽しめるため、庭木やシンボルツリーとしても親しまれています。目的別に、家庭での栽培に適したオリーブの選び方や、おすすめの品種を紹介します。
オリーブの起源

オリーブは丈夫で育てやすいため、世界中で栽培されています。暖かい場所を好みますが、耐寒性もあるので、幅広い地域で育てられているのです。
オリーブの果実は塩漬けやピクルスなどのほか、絞ってオイルにして食用にも使えます。貴重な食材として、古くから栽培が行われてきました。オリーブの歴史や、人類とのかかわりについて紹介します。
栽培の起源はトルコやシリア
オリーブの原産地は西アジアや地中海沿岸一帯など、多岐にわたります。栽培の起源は古く、トルコやシリアなどの中東で約6000年前に始まりました。中東から、ギリシャやイタリアに伝わったとされます。
オリーブは温暖な気候でよく育ち生命力が強いことから、幅広い地域に根付いていきました。各地に伝わるとともに、野生種にほかの品種を接ぎ木し、新しい品種が生み出されていったのです。
現代ではイタリアとスペインがオリーブの代表的な産地となっていて、世界で生産されているオリーブの半分以上のシェアを占めています。
神話にも登場する聖なる木
諸説ありますが、オリーブはギリシャ神話に登場する女神アテナのシンボルの木となっていて、神話ではアテナがつくり出したとされています。
旧約聖書の「創世記」の中で「ノアの方舟」のエピソードにも登場し、洪水の後でノアが世界の様子を探るために鳩を飛ばし、戻ってきた鳩がくわえていたものがオリーブの小枝です。
オリーブは生命力が強いため、復活の象徴とされたのでしょう。また、神話だけでなく「ハムラビ法典」の中にも、オリーブに関する記述が見つかっています。このことから、文明の発展にも影響を与えてきたことが分かります。
日本に伝わったのは16世紀
日本にオリーブが伝わったのは16世紀で、キリスト教の宣教師が持ち込んだと伝えられています。当時は苗ではなく、樽に詰められたオリーブの実やオイルが持ち込まれました。
オリーブの苗木は江戸時代末期に海を渡ってきて、横須賀に植えられます。その後、神戸で栽培に成功し、実が採取されました。
明治期になると海産物をオイル漬けにして保存するために、オリーブオイルの本格的な生産が始められ、香川県の小豆島が日本のオリーブの産地となります。
岡山県瀬戸内市でもわずかに栽培されていますが、日本のオリーブの90%が小豆島で栽培されているのです。
オリーブの木の特徴

オリーブはモクセイ科の常緑高木(じょうりょくこうぼく)です。眺めているだけで南欧を思わせる雰囲気を味わえるため、洋風の庭木にも導入されています。
環境がよければ約10m程度の大きさになることもありますが、剪定で高さを抑えたり、樹形を整えたりする楽しみもある木です。オリーブの木の特徴を見ていきましょう。
種類は1000種類以上
オリーブは世界中で栽培されているだけあって種類も多く、1000種類以上の品種があります。日本の小豆島だけでも『60種類近い品種』が栽培されてきました。
オリーブは品種によって花の多さや葉の形に違いがあります。横に広がる樹形もあれば、縦にスッと伸びていく直立形もあり、それぞれに個性が異なるので、苗を購入する前にあらかじめどんな樹形に育つものなのかを押さえておくとよいでしょう。
剪定で樹形を整えることもあり、種類の違いを見分けることが難しいです。購入するときは、ネームタグをよく見て選びましょう。
たくさんのオイルを含む実が採れるものや受粉用に使われるものなど、種類によって育てられる目的が異なり、個性が豊かです。
細長く先のとがった葉が特徴
オリーブの木の魅力は多いですが、中でも葉の美しさが特徴的です。美しい葉の存在感が、シンボルツリーとして選ばれる理由の一つとなっています。
品種によってさまざまですが、葉の大きさは5~8cm程度です。葉の表側が緑色、裏側が緑灰色や銀白色となっています。
細長く先がとがった楕円形やへらのような形をしていて、葉の裏側に短い毛が生えています。常緑樹なので、年間を通じて美しい姿を楽しめるでしょう。
どんな花や実をつけるの?
オリーブは5~6月頃に、白やクリーム色の小ぶりで可愛らしい花が咲きます。品種によって異なりますが、10~11月頃に実をつけます。それぞれに実の特徴が違い、大きな実をつけるものもあれば小さな実をつけるものもあり、形もさまざまです。
実ができると、緑色からだんだんと赤く熟していき、最終的には黒っぽい色に変化していきます。
「オリーブは必ず実がなるもの」と思っている人が多いかもしれませんが、自家結実性が弱いので、たくさんの実を採取するには『違う品種のオリーブを2種類以上植えること』が必要です。
花が咲く期間は1週間程度なので、受粉させるには『開花する時期が近いもの同士』を植えなければなりません。
オリーブの種類は目的で選ぶ

オリーブはたくさんの種類があるので、どれを選んだらよいか分からなくなりがちです。「どこに植えるか」「何のために植えるか」など、目的別に選ぶとぴったりなものを選びやすいでしょう。
目的別に、オリーブの種類の選ぶときのポイントを紹介します。
庭のシンボルツリーにしたい
シンボルツリーはその家や庭の顔となる木です。オリーブは丈夫な上、剪定して好みの形にできるので庭木に向いています。
シンボルツリーとなるオリーブを探している場合、『枝葉や根がよく成長する品種』を選ぶことがおすすめです。縦によく伸びる直立形で、剪定しながらコンパクトに育てやすい品種を選ぶとよいでしょう。
庭のスペースに余裕がある場合なら、横に大きく枝を広げながら成長する品種でもOKです。横に広がるタイプは、ふんわりとした樹形に成長します。庭の広さを考慮しながら、好みの品種を選んではいかがでしょうか。
リビングのグリーンとして育てたい
オリーブは鉢植えでも育てられるため、リビングに置く観葉植物としてもおすすめです。
室内で観賞したい場合はコンテナに植え、日当たりがよい窓辺に置きましょう。ときどきはベランダや庭に出し、たくさんの日光をあててあげると元気に育ちます。
移動させることを考えると、『コンパクトに仕立てられる品種』がおすすめです。鉢植えでもよく育ちやすい「マンザニロ」や「チプレッシーノ」などを選ぶとよいでしょう。
また、鉢カバーを利用すれば、よりインテリア性を高められます。
実を収穫したい
オリーブの実は観賞用としても見応えがある上、食用にもできるので用途の幅が広いです。実を収穫する楽しみは、オリーブを育てたくなる理由の一つでしょう。
オリーブは違う品種同士が近くにあると、たくさんの実をつけます。複数のオリーブを育てられない場合、『自家結実する品種』を選ばないと実ができません。
実の大きさは、品種によってさまざまです。例えば、「コロネイキ」は、小さく可愛らしい雰囲気の実をつけます。実の存在感を楽しみたい場合は「マンザニロ」のような、大きな実をつけるものを選びましょう。
庭植えにおすすめの品種

庭にオリーブを植えると、地中海風のおしゃれな庭を目指せます。洋風なだけでなく、沿岸部のような雰囲気を楽しめるところが魅力です。
芝生との相性もよく、美しい庭を作れます。庭植えに適した品種を見ていきましょう。
葉色が美しい ミッション
アメリカのカリフォルニアで発見された品種です。直立形でスマートな樹形に育ちやすく、成長も早いので、観賞用としてだけでなく垣根にも利用されています。
小豆島でも栽培されていて、日本で多く流通しているので手に入りやすいです。葉は銀色がかった緑色で、先がとがっています。美しい葉の色を楽しめるところが魅力です。
長円形で油の含有量が高く、香りがよい実がなります。受粉木に適した種類は「ルッカ」「ネバディロ・ブランコ」などです。
初心者にも育てやすい レッチーノ
原産地はイタリアのトスカーナ地方です。直立形で葉はコンパクトな形をしており、葉の先端がややカールしていて、表情があります。
葉の裏が白いので、風に吹かれると全体が淡いグリーンに見えるでしょう。『気候の変化や病害虫に強い』ので、初心者でも育てやすいです。
小さめから中くらいの大きさの実をつけ、フルーティーな香りの良質なオイルがとれます。「ミッション」「フラントイオ」「ペンドリノ」などが受粉木として好相性です。
ダイナミックな樹形が特徴 ルッカ
イタリア原産の品種で、枝葉がよく茂り樹勢が旺盛です。樹形は開帳形で枝は横に開きながらダイナミックに伸びていくので、剪定をして整えましょう。成長するままに任せていると、枝がねじれていきます。
葉が卵型で丸みがあるので、どちらかというと、可愛らしい雰囲気を楽しめるでしょう。実は小さいですが、受粉木との相性がよければ、たくさんの実ができるので収穫も楽しみです。
収穫した実はオイルの含有量が高く、自家製のオリーブオイル作りを楽しめます。相性がよい受粉木は、「マンザニロ」や「ネバディロ・ブランコ」などです。
鉢植えにおすすめの品種

オリーブは丈夫で育てやすく、地植えだけでなく鉢植えでも育つ品種が多いです。鉢植えなら移動させられるので、日当たりがよい場所に移したり、寒い時期に家の中に移動させたりと、環境に合わせた世話ができます。
鉢植えにおすすめの品種を見ていきましょう。
直立性でバランスがよい チプレッシーノ
イタリアのシチリア島が原産の品種で、樹形は上に伸びる直立形です。バランスがよい樹形に育てやすいので手入れも簡単で、鉢植えにぴったりだといえます。
イタリア語で糸杉を意味する「チプレッソ」が名前の由来です。葉がよく茂るので、イタリアでは防風林や生垣などにも利用されています。
葉は先がとがったやや大きめの銀葉です。樹皮はすべすべとしていて、グレーがかった茶色をしています。葉の色が美しいだけでなく、収穫を目的とした栽培にも向いている品種です。
実の形は楕円形で、中くらいの大きさをしています。自家結実しないので、実を収穫したい場合は「モライオーロ」「マウリーノ」「レッチーノ」などを一緒に植えましょう。
トピアリーにおすすめ ネバディロブランコ
原産地はスペインです。直立形で枝葉が多く出て、旺盛な成長を見せる品種となっています。
コンパクトに育てられるので鉢植えにおすすめです。剪定で好みの形に仕立てやすく、根元に近い部分の枝を落とし、上部をこんもりと茂らせたトピアリー仕立てなど、印象的な樹形に整えられます。
ほかの品種に比べて花粉の量が多いため、受粉用としても育てられることが多いです。ほかの品種に比べて実ができる時期が早く、夏頃に結実します。
自家受粉もできる品種ですが、受粉木として「ルッカ」「ミッション」なども一緒に育てるとよいでしょう。
樹形の美しさで人気 モライオロ
中央イタリア原産で直立形です。上へと伸びるタイプなので、樹形が美しくまとまりやすく、コンパクトに育てられます。
根が強く丈夫で『耐寒性が高く乾燥にも強い』ため、初心者でも鉢植えで育てやすい品種です。
花粉量が多いので実がなりやすく、たくさんの収穫を見込めます。実は中くらいの大きさで、オイルの含有量が高くフルーティーな味わいを楽しめることが特徴です。
「ペンドリノ」「マウリーノ」「ラッザロ」などの受粉木と相性がよいでしょう。
実がなりやすいおすすめの品種

オリーブは観賞するだけでなく、収穫を楽しめるところが魅力です。採取した実を使ってオイルを絞り出すほか、塩漬けやジャムなどにも利用できます。
実を加工して食べるだけでなく、実をつけた枝を切り取り、飾って楽しめるところも魅力です。
同じオリーブでも、品種によってよく実ができるものとそうでないものがあるので、注意しましょう。よく実をつけてくれる品種を紹介します。
丸い実が可愛い マンザニロ
スペイン原産の品種です。スペイン語で「小さいりんご」を意味する「マンサニーリャ」が名前の由来となっています。
名前の通り、実がりんごのような丸い形をしていて大きいです。オイルを採取するだけでなく、塩漬けやピクルスにしてもおいしく食べられます。
葉は幅広でやや小ぶりです。樹形がコンパクトになりやすいので、鉢植えでも育てられます。たくさんの実をつけるには、「ルッカ」「ネバディロブランコ」などの近くに植えましょう。
他のオリーブとも好相性 コロネイキ
ギリシャ原産で、高級なオリーブオイルに使用されている品種です。ギリシャで栽培されているオリーブの大半が、コロネイキとなっています。
暑さには強いですが、寒さにやや弱いので厳寒期は注意しましょう。樹木の上部が広がる樹形で、葉は小さめです。
実は小粒で可愛らしく、自家受粉もできる品種です。1種類で育てると実が少なくなるので、できれば2種類以上を育てましょう。花粉量は多く、「マンザニロ」「ミッション」などの受粉木として使われることも多いです。
鈴なりに実をつける アルベキーナ
スペイン原産の品種で、コンパクトな樹形に育てやすく、鉢植えでの栽培が簡単です。葉は小ぶりでよく茂り、小さな実が鈴なりになります。比較的若木のうちから実をつけてくれるところが魅力です。
あまり大きくならない品種なので、広いスペースが確保できなくても育てられます。日本ではやや手に入りにくく、希少価値が高いです。
青いバナナのような香りと、繊細な味わいのオイルがとれる実をつけます。自家受粉もできる品種ですが、実は少なくなるので「マンザニロ」などと受粉させるのがおすすめです。
オリーブを上手に育てるポイント

育てたい品種が見つかったら、オリーブの育て方も押さえておきましょう。丈夫なので普通に世話をしていれば枯れることは少ないですが、育て方のポイントが分かっていれば、より美しい姿に育てられます。
オリーブを上手に育てるポイントや、注意点を見ていきましょう。
樹形を整える剪定や摘芯
オリーブは日本の気候でも育てやすい木ですが、剪定することでより丈夫に育ちます。余分な枝や古くなった枝を取り除けば風通しがよくなり、病害虫の発生を予防できるでしょう。
成長が早い品種は春に1回、緩やかに成長する品種でも、2年に1回は剪定をしましょう。剪定する時期は、生育が穏やかになる『2~3月頃』がおすすめです。
生育が盛んな5~10月に、伸びすぎた枝があれば切りそろえて構いません。ただし、厳寒期は木が休眠しているため、枝を切ると弱ってしまうことがあります。
また、生育期に新芽に養分をとられすぎないように、新しく伸びた枝先を切ることを「摘芯」といいます。枝先にわたる養分が脇芽に向かうようになるので、適宜行いましょう。
病害虫に注意
オリーブは丈夫な性質を持っていますが、病害虫が発生すると弱ってしまいます。病害虫をそのままにしておくと、最悪、枯れることもあるので注意しましょう。
木の枝や幹に白い汚れがついていたら、「カイガラムシ」の食害が疑われます。歯ブラシなどでこすり落とすか、枝を切って対処しましょう。
ほかにも、樹皮に「オリーブアナアキゾウムシ」が発生することがあります。株元をよく見て、おがくずのようなものが落ちている場合、オリーブアナアキゾウムシが発生している可能性が高いです。
毎日、木の様子をよく観察していると、病害虫が発生しても初期の段階で対処しやすくなります。いつもと変わった様子がないか、気にかけてあげましょう。
まとめ
オリーブは地中海沿岸部に自生する常緑高木で、約6000年前にトルコやシリアなどで栽培が始まりました。古くから人々の生活を支えてきた樹木として、神話の世界にも登場します。
日本でも明治期から栽培され、小豆島が名産地として有名です。オリーブの品種は1000種類以上におよびますが、日本で栽培されている品種は約60種類となっています。
たくさんの品種があるので迷ってしまいますが、基本的には育てたい場所に合った種類や、目的に合ったものを選びましょう。
実を収穫したい場合、2種類以上の品種を植えることがおすすめです。枝が伸びすぎたら剪定し、病害虫を見つけたら早い段階で処理すれば、健康的な姿に育てられるでしょう。