アンゲロニアとはどんな花?特徴から育て方まで詳しく解説
アンゲロニアはラベンダーに似たオオバコ科アンゲロニア科の植物で、初夏から秋までの長期間花を楽しめます。害虫に強く、挿し木に加えて種を採取してまくことでも増やせるため、初心者でもかんたんに育てられるのが特徴です。
アンゲロニアの基本情報と特徴
アンゲロニアは中南米原産の多年草で、オオバコ科に属します。外見がラベンダーに似ているため、アンゲロニアは「エンジェルラベンダー」という商品名で販売されることもありますが、シソ科のラベンダーとは無関係の植物です。白、青、ピンクなどの花を6月から10月にかけて咲かせます。
アンゲロニアは初心者でもかんたんに育てられます。日当たりは1日3時間程度でも良く、丈は最長でも100cm程度のため鉢植えで育てられます。一方でアンゲロニアには暑さに強く寒さに弱い特徴があり、ナメクジやアブラムといった天敵にも注意が必要です。
アンゲロニアの科・属
アンゲロニアはシソ目オオバコ科アンゲロニア属の植物です。熱帯地方原産の多年草ですが、寒さに弱く、日本など寒暖差が大きい地域では一年草としても扱われます。シソ目は太い根を持ち最初に二枚の葉を付ける真正双子葉類であり、アンゲロニアが属するオオバコ科のほかゴマ科やシソ科などがあります。
2009年に発表された植物学の分類体系であるAPG IIIによると、オオバコ科は90属1,700種の植物を内包します。日本に自生する代表的な植物はオオバコ属、クガイソウ属、クワガタソウ属のヒメクワガタやオオイヌノフグリなどです。アンゲロニアはアンゲロニア属に含まれる約30種の植物の総称です。
アンゲロニアの原産地
アンゲロニアの原産地はメキシコからアルゼンチンにかけての中央・南アメリカや、カリブ海域の西インド諸島といった熱帯・亜熱帯地域です。アンゲロニア属の多くの種はブラジル北東部の熱帯季節乾燥林・カーチンガに存在します。熱帯・亜熱帯が原産地であるため、アンゲロニアは暑い時期に開花します。
アンゲロニアは種の採取がかんたんなため、原産地の中南米以外でも観賞用に栽培されています。ただ、熱帯地方の年間最低気温は18度程度であり、アンゲロニアが寒さに弱い原因です。日本でアンゲロニアを栽培する際は、鉢植えにして冬季は屋内に入れるなど工夫してください。
アンゲロニアの和名・英名・学名
アンゲロニアは日本に自生しない植物のため伝統的な和名はありませんでしたが、現在は細葉アンゲロン草(ホソバアンゲロンソウ)と呼ばれます。細い葉が多く付く特徴を表しています。英語名はAngeloniaであり、ギリシャ語で天使を意味するAngelosが語源です。
学名も英語名と同じAngeloniaですが、特定の種ではなくアンゲロニア属の総称で、代表的なアングスティフォリア種の学名はAngelonia angustifoliaです。なお、エンジェルラベンダーという別名もありますが、単なる愛称であり英語名や学名ではありません。
アンゲロニアの花の色・特徴
アンゲロニアは細長い茎の左右に多数の小さな花を咲かせる植物であり、形状がラベンダーに似ています。色はピンク、青、紫、白などで、花弁は上下に分かれており数は5枚前後です。中央の雄しべと雌しべが荒々しく見えることから、動物が口を開けたような形とも捉えられます。
アンゲロニアは強い個性を持つ派手は花とはいえないため、どのような庭にも適しています。鉢植えにすればインテリアのアクセントとしても活躍するでしょう。夏に咲く花でありながら葉はか細いため、涼しげな印象ももたらしてくれます。
アンゲロニアの開花時期と見頃の季節
熱帯・亜熱帯が原産のアンゲロニアは、6月から10月の暑い時期に開花して見頃を迎えます。開花期であれば次々に花を咲かせるため見るものを楽しませますが、一方で寒い時期は花を付けず、屋外に放置していると枯れてしまう可能性があります。
アンゲロニアを栽培する場合も、植え付け・種まきや肥料やりといった世話のほとんどを開花期直前の5月から10月の間に行う必要があります。もっとも、アンゲロニアは冬でも尖った野性的な葉を落とさないため、緑色の彩りをもたらしてくれます。
アンゲロニアの開花時期は6月から10月
アンゲロニアは5月下旬頃から6月にかけて開花期を迎え、10月から11月頃に花を落とします。一般的には6月から10月までが開花期と捉えて問題ありません。アンゲロニアは暑さを求める植物であるため、1日あたりの日照時間も3時間ほど必要です。
アンゲロニアは10月中旬までが見頃
暑さに強いアンゲロニアは、湿度が高く厳しい日本の夏にも適応できます。開花期が長めであるため、花がしぼみ始める10月中旬までが見頃です。白や青といった花の色に清涼感があるため、花壇でも鉢植えでも夏の景色にアクセントを与えてくれるでしょう。
アンゲロニアは同じシソ目のラベンダーのように、細長い茎の上部に多数の花を縦に連なる形で咲かせます。見頃の時期には、花のみならず甘い香りをも楽しめるのが特徴です。花壇のある庭園や植物園を訪れると、淡い色をしたアンゲロニアの花が一面に咲く様子が見られます。
アンゲロニアの花言葉と由来
残念ながら、アンゲロニアはプレゼントには適さない花です。なぜならば花言葉が「過去の恋人」「片思いの人」や「拒否」「無遠慮」といったネガティブなものばかりであり、大切な人に誤ったメッセージを送ってしまうおそれがあるためです。
アンゲロニアの花言葉の由来は、原産地が中南米・カリブ海の西インド諸島であること、熱帯で育つこととはあまり関係ありません。アンゲロニアの花の形が花言葉を作ったと考えられます。
アンゲロニアの花言葉は「過去の恋人」
アンゲロニアの花は、合わせて5枚ほどの花びらが上と下に分かれた形状です。花の形が人の頭蓋骨のように見えるといわれており、花言葉の「過去の恋人」を連想させます。つまり、恋人が亡くなって骨になってしまった、あるいは死んだも同然の過去の人だという意味です。
同じくアンゲロニアの花言葉である「拒否」も、不気味な頭蓋骨が生命を拒絶するイメージです。「無遠慮」も表情を持たない骸骨が示す、人間味が感じられない態度の表れでしょうか。まるで育てる人自身がアンゲロニアに片思いするかのようです。
もちろん花言葉は後付けのイメージで明確な根拠はありませんから、アンゲロニアの美しさを損なうものではありません。
アンゲロニアという名前の由来
不名誉な花言葉とは裏腹に、アンゲロニアという植物の名前はギリシャ語の「Angelos」、つまり天使に由来します。花の形が翼を広げた天使のように見えることが由来であり、アンゲロニアには天使に関連付けられた呼び名が多く存在します。
園芸用に改良されたアンゲロニア・アングスティフォリア種は、「エンジェルラベンダー」や「エンジェルフェイス」といった通称名で多く流通しています。また、中国語圏の漢字表記は「天使花」です。アンゲロニアは名前の由来と花言葉のイメージが大きくかけ離れていると言えます。
アンゲロニアの種類と品種
アンゲロニアの学名はアンゲロニア・アングスティフォリア(Angelonia angustifolia)であり、品種改良によって多くの園芸品種が生み出されました。たとえば、アンゲロニア・エンジェルフェイスと呼ばれる品種の学名はAngelonia hybridです。
ほかにヤナギバアンゲロンソウ(学名Angelonia salicariifolia)やアンゲロンソウ(学名Angelonia gardneri)など、アンゲロニア属の植物は約30種存在します。次に、主な園芸用品酒であるセレナとカリータの特徴を見ていきましょう。
セレナ
アンゲロニア・セレナ(Angelonia serena)は原種を園芸用に小型化した品種です。別名に「サリカリフォリア」や「サマー・スナップドラゴン」があります。セレナを家庭で栽培する場合は、苗ではなく種から育てるのもかんたんです。
セレナは「パープル・ストライプ」と呼ばれる紫と白が混ざった色の花を付けるのが特徴です。また、花がピンク色の「セレナ・ローズ」や白い「セレナ・ホワイト」もあります。アンゲロニアの中では丈が比較的低くなる傾向があります。
カリータ
アンゲロニア・カリータ(Angelonia carita)はやや大きめで、人の膝と同じくらいの高さまで成長します。白と紫色の花が特徴的です。花は人や動物が大きく口を開けて叫んでいるかのような外見で、庭に彩りをもたらすセレナに対し、カリータはインパクトを与えてくれます。
カリータはアンゲロニアの中でも暑さと乾燥に強い品種なので水やりに気を付ける心配はありませんが、複数の株を並べる場合は45cmほど間隔を開けるなどの工夫が必要です。