蓮(ハス)の育て方|種や苗から育てる手順や季節ごとのポイント
神秘的な雰囲気の蓮は、十分な水を入れておける深さの鉢があれば、自宅の庭やベランダでも育てられます。一般的な苗から育てる方法はもちろん、種からも栽培可能です。2種類の育て方の手順や、季節ごとの管理の仕方を紹介します。
蓮(ハス)の特徴
蓮の栽培をするにあたり、まずは基本的な知識を身に付けましょう。特徴や品種を知ることで、スムーズな栽培や好みの蓮を選ぶことにつながります。
蓮(ハス)の基本情報
科・属 | ハス科ハス属 |
和名 | 蓮(ハス) |
英名 | Lotus, Indian lotus, Sacred lotus |
学名 | Nelumbo nucifera |
花の色 | 白、ピンク |
原産地 | インド亜大陸とその周辺 |
開花時期 | 7~8月 |
早朝に開花する蓮
東南アジア原産の『草本性水生植物』である蓮は、朝早い時間に花が開き、昼には閉じます。そのため、美しい花を観賞するなら、早朝が見頃です。
長い柄があり、大きなものだと水面に1.5m以上も伸びる葉は、円形や楕円形をしています。水を弾くため、葉の表面に丸い水の玉が転がっている様子も観察可能です。
鑑賞用はもちろん食用としても用いられる植物のため、世界中で栽培されています。日本で食材として使われる部位は、地中に埋まっている『レンコン』です。他の国では葉から茎まで食べられています。
『蓮茶』も有名です。アジア各地に、花・葉・実などを使ったお茶があります。また、仏教を始め、さまざまな宗教において特別な意味を持つ花です。
主な蓮の種類
蓮にはさまざまな種類があります。花がピンクで『ハス』と呼ばれるヌシフェラ種と、黄色い花が咲く『キバナハス』と呼ばれるルテア種が代表的です。両者を交雑させた品種も作られています。
『大賀蓮』はハスの代名詞といわれている品種です。千葉県で出土した2000年前の種を大賀一郎博士が発芽させました。花色は縁が濃いピンクのグラデーションです。千葉県の天然記念物に指定されています。
北米原産で一重の黄色い花を咲かせる『アメリカキバナハス』は、キバナハスを代表する品種です。
また、ハスとキバナハスを交雑し作られた『ミセス・スローカム』は、花の咲き始めはピンク、開花後3日ほどたつと黄色に変化します。
蓮(ハス)を自宅で育てる方法
自宅で蓮を咲かせる方法は2種類あります。どちらも自宅で無理なくできる方法です。それぞれの栽培方法を見ていきましょう。
種から育てる
蓮は種からも育てられます。ただし、普通の花とは異なり、ただ種まきをしただけでは発芽しません。蓮の種は硬い殻で覆われていて水を吸わないため、金属製のやすりで外側の殻を削らなければいけないのです。
殻を削るときは、『とがった方と反対側を削ること』と『中身を傷つけないこと』がポイントといえます。中身が見えるくらい殻を削れたら、透明な容器に水と種を入れ、日の当たる場所に置けばOKです。
ただし、種から育てた実生の蓮の場合、親と違う色や形の花が咲くことがあります。どのような花が咲くか分からない楽しみがある反面、育てたい品種がはっきりしている場合には向いていません。
苗を育てる
苗を植え付けて育てるのは、種から育てるよりも一般的な方法です。レンコンの状態の苗や、ポットに植え付けされているポット苗を植え替えて育てます。
レンコンの状態なら、よく洗ってきれいにしてから、土を入れた鉢に植え付けましょう。ポット苗の場合には、一緒に土が入っているため、土ごと取り出して植え替えます。
種と異なり、どのような花が咲くか分かっているため、育てたい品種が決まっている場合に向いている育て方です。
蓮(ハス)の育て方のポイント
きれいな蓮を咲かせるためには、ポイントを押さえた栽培が大切です。適切な育て方をすることで、毎年きれいな蓮を観賞できます。
種まきや植え付け
種から育てる場合、種まきには『4~5月』が適期です。先に紹介したように、殻を削り、水に浸します。
葉が2~3枚出て根が約5cmまで伸びたら、鉢やポットへ植え付けます。種まきから植え付けまでの期間は2週間が目安です。
鉢やポットに田んぼの土を2~3cm入れ、苗を置き、さらに土を容器の1/3ほど入れ、植え付けます。そこへ水を注ぎ入れて完成です。
苗から育てるなら、『3~4月』の植え付けが適しています。
7~10号の鉢を用意し、2/3ほど田んぼの土を入れましょう。そこへ、新芽が上向きになるよう苗を置きます。苗に土をかぶせた後、鉢の縁まで水を注げば完了です。
肥料や水やり
肥料は、鉢に入れる土に元肥を混ぜ込みます。緩効性化成肥料か、骨粉と油かすを同量混ぜたものを与えましょう。その後は、秋になり花や葉が枯れるまで、1カ月に1度のペースで同じ肥料を施します。
水生植物である蓮を育てるときには、水の管理もポイントです。
土の表面から10~15cmは水が必要なので、小まめに『継ぎ足し』ます。じょうろを使い、水があふれるように継ぎ足すと、表面に汚れが浮くのを予防できます。
交換ではなく継ぎ足しで日常的な管理をするのは、水温を下げずにキープすることと、水中のバクテリアを増殖させるという目的があります。このように管理することで水が腐りにくくなるのです。
水の交換は植え替えのときだけ行います。
蓮(ハス)の病気について
管理の仕方によっては、蓮が病気にかかることがあります。
代表的な病気は『腐敗病』です。普段は地中にいて悪影響のない菌が、蓮の地下茎へ侵入することがあります。菌の侵入が原因となり、根・葉・茎が腐るのです。
菌が侵入するきっかけとなるのは乾燥です。そのため、常に水が不足しないよう継ぎ足すことが、病気の予防につながります。