アンスリウムの育て方と挿し木の方法|手入れの仕方と増やし方、注意点も
アンスリウムは本来は樹上で育つ着生植物で、根腐れを防ぐため鉢植えで育てます。生育期間中の5〜7月上旬になら、挿し木をして増やすこともできます。アンスリウムの伸びすぎた茎を切ってバランスを取り、切り取った茎は挿し木にするとよいでしょう。
アンスリウムを育てる前に知っておきたいこと
アンスリウムは熱帯を原産地とする植物で、鮮やかな赤やピンクに色づいた仏炎苞(ぶつえんほう)がトロピカルな雰囲気を持っています。アンスリウムの名の由来はギリシャ語の「anthos(花)」と「oura(尾)」で、ハート型の仏炎苞から細長い肉穂花序(にくすいかじょ)が伸びている様から付けられています。
アンスリウムの基本情報
アンスリウムの基本情報は以下の通りです。
科・属 | サトイモ科、アンスリウム属(ベニウチワ属) |
和名 | 大紅団扇(オオベニウチワ) |
英名 | Flamingo flower、Tail flower |
学名 | Anthurium |
花の色 ※実際には苞の色 | 赤、ピンク、白、緑、紫、茶、複色 |
原産地 | 西インド諸島、熱帯アメリカ |
開花時期 | 5〜10月 |
アンスリウムの特徴
アンスリウムはハート型の仏炎苞と、その真ん中から伸びる肉穂花序が特徴的です。仏炎苞は花びらではなく肉穂花序を守るための葉で、鮮やかな赤やピンクに色づいています。そしてアンスリウムの肉穂花序には極小の花が密集して咲いており、黄色から白、緑へと徐々に色が変化していきます。
アンスリウムは本来大きな樹木の上に生える着生植物で、地面に根を張りません。根腐れの可能性があるので庭植えには適さず、鉢植えで育てるのが一般的です。
アンスリウムの種類と選び方
アンスリウムの仲間は、西インド諸島から熱帯アメリカにかけて600種以上が分布しています。仏炎苞を楽しむ品種の主な原種は「アンスリウム・アンドレアヌム」で、派生した園芸品種が鉢物や切り花で多く流通しています。
アンスリウムには葉の形や色、光沢が美しい品種もあり、ハワイではバレンタインデーの贈り物として人気です。
1.葉を楽しめる品種
アンスリウムの葉を観賞する品種は、仏炎苞を観賞する品種よりも長い期間楽しめます。たとえば「アンスリウム・ロムズレッド」は新芽が美しい赤銅色なのが特徴。「アンスリウム・クラリネルビウム」は、仏炎苞と肉穂花序ともに小さく控えめですが、ハート型で暗緑色の大きな葉に銀白色の網目模様が美しい品種です。
2.仏炎苞を楽しめる品種
アンスリウムの仏炎苞の多くは赤色ですが、ピンクやグリーン、白色のものもあります。草丈が低く仏炎苞が小さめのものは花がたくさん付き、草丈が高く仏炎苞が大きめのものは花の数が少ない傾向です。
・アンスリウム・シェルツェリアヌム:仏炎苞と肉穂花序がともに真紅になる美しい品種。小型の鉢物を購入できる。
・レッド・チャンピオン:赤い仏炎苞と黄色の肉穂花序のコントラストが楽しめる品種。中型の鉢物が多く出回っている。
アンスリウムを育てるときに必要な準備
アンスリウムを直射日光に当てると葉焼けしてしまうので、屋外では寒冷紗や遮光ネットをかけ、屋内ではレースのカーテン越しに陽が当たる場所に置いてあげましょう。土は水はけを良くし、根腐れが起きないようにします。アンスリウムは株から育てるのがおすすめ。好みの仏炎苞や葉が付いているものを選んでみましょう。
日当たり・置き場所
アンスリウムは冬以外の時期なら屋外にも置けますが、直射日光が当たると葉焼けが起きてしまうので、3〜5割ほど遮光しましょう。寒冷紗や遮光ネットをホームセンターや100均ショップなどで購入し、被せてやります。
耐陰性があるので屋内管理もできますが、健康に育てるには陽の光が当たる場所に置きます。直射日光は避け、レースのカーテン越しに光を当ててやるとよいでしょう。また、エアコンの風は葉にダメージを与えるので、直接当てないように注意します。
アンスリウムは熱帯原産なので高温に強く、低温に弱い性質があります。10℃以下の場所には置かないようにし、屋外に出しているときは外気が15℃くらいになったら屋内に入れてあげましょう。
用土・土作り
高温多湿の環境に向いているアンスリウムですが、水はけの悪い土では根腐れになるおそれも。自分で作るときは観葉植物用の土2:鹿沼土1:赤玉土1を目安に混ぜ、水はけを良くしましょう。また、洋ラン用の培養土は水はけが良く、アンスリウムにも向いています。そして土の表面を無機質の鹿沼土や赤玉土、化粧砂などで覆ってやると、コバエの発生を防げます。
株の準備
アンスリウムは種から育てることもできますが、ホームセンターや園芸店などから株を買って育て始めるのがおすすめです。
アンスリウムは葉に光沢があって色が濃いか、茎がしっかりしているかをチェックしましょう。アンスリウムの多くは新しい花が付いた肉穂花序は黄色、その後白〜緑色へと変化します。株の一番上に付いている肉穂花序が白や緑色だと株が弱っていることがあるので、選ばないようにしましょう。
アンスリウムの株を持ち帰るときには、肉穂花序を折ってしまわないよう注意してください。
アンスリウムの育て方・栽培方法
アンスリウムの株を購入したら、すぐに新しい鉢に植え付けましょう。水は土が乾いてからあげるようにし、生育期にのみ肥料をあげます。
古い花を放っておくと株が弱ってしまうので、茎の根元から切り取ってしまいます。生長期にはグングン大きくなるので、古い葉なども剪定してしまいましょう。
アンスリウムの植え付けの時期と方法
アンスリウムの植え付けの適期は5〜8月です。購入した株は鉢の中で根がパンパンになっていることが多いので、すぐに新しい鉢に植え付けてあげましょう。
アンスリウムを育てるときは、購入した株の鉢よりもひと回り大きな鉢を用意します。底に鉢底ネットと鉢底石を2〜3cmほどの高さまで入れ、土を鉢の高さの1/4ほどまで入れましょう。購入した鉢からアンスリウムの株を抜いたら、根の下部分の土を手でほぐします。
鉢の中心にアンスリウムの株を置き、土を加えて隙間を埋めます。割り箸などでつついて根と鉢の隙間に土を入れてやりますが、根を傷めないように注意を。鉢の上から2〜3cmほどまで土が入ったら、鉢底から水が出てくるまでを目安にたっぷりの水をあげましょう。
アンスリウムの水やり・肥料の与え方
アンスリウムは湿った土を嫌うため、水をやりすぎないようにします。5〜10月の生育期には、土が乾いたのを確認してからたっぷりと水をあげましょう。鉢皿に水があふれたら、放置せずにすぐに捨てます。
気温10℃以下の寒い時期になると、アンスリウムは休眠期に入ります。水やりは生育期よりも控えるよう、土が完全に乾いてからさらに2〜3日ほど経ってからで大丈夫です。
一方で空気中の湿気はある方が良いので、茎と葉に霧吹きで水をやる「葉水」が欠かせません。とくに屋内の冷暖房のある部屋に置いている場合は、こまめに葉水して乾燥を防ぎましょう。
アンスリウムに肥料をあげすぎてしまうと、肥料焼けを起こして枯れてしまうかもしれません。5〜10月の生育期にのみ、規定量の固形の緩効性肥料を置き肥しておきましょう。
アンスリウムの植え替え・鉢替えの時期と方法
アンスリウムの植え替えや鉢変えは植え付け同様に5〜8月が適期で、2年に1回を目安にしましょう。2年以下でも鉢底から根が出ていたら、植え替えのサインです。手順は植え付けと同じですが、傷んで黒く変色した根を見つけたら清潔なハサミで切り取っておきます。
アンスリウムの花茎切りの時期と方法
多くのアンスリウムの肉穂花序は古くなると緑に変化し、仏炎苞も色あせてしまいます。そして古い花を茎の根元から切り取ってやると、また新しい花をつけてくれます。緑色の肉穂花序を放置していると実がなり、形が凸凹に変化。こうなると実に栄養がいってしまって株が弱ってしまうので、古い花はすぐに切り取ってしまった方がよいでしょう。
また、アンスリウムは生長期にぐんと大きくなることがあるので、邪魔な葉や古い葉は剪定してしまいましょう。アンスリウムなどのサトイモ科の植物の樹液は、人間の皮膚をかぶれさせることがあります。花茎切りや剪定をするときは必ずゴム手袋をはめ、樹液が皮膚についてしまったらすぐに流水で洗い流しましょう。
アンスリウムの増やし方
アンスリウムは株分けや挿し木で増やせます。植え替えや仕立て直しのついでに、トライしてみてはいかがでしょうか。