椿(ツバキ)の育て方|植え替えの時期や増やし方、注意すべき害虫
冬の寒さに負けず、美しい花を咲かせる様子はまさに日本人好みといえる椿(ツバキ)。日本が原産なので、日当たりや土壌といった生育環境に適応しやすい花木といえます。生け垣のように植えてもいいですし、鉢植えで小ぶりに育てて楽しむこともできます。そんな椿(ツバキ)の育て方、増やし方などお手入れ方法を解説します。
椿(ツバキ)を育てる前に知っておきたいことは?
椿(ツバキ)の基本情報
科・属 | ツバキ科ツバキ属 |
和名 | 椿(ツバキ) |
英名 | Camellia, Japanese camellia |
学名 | Camellia japonica |
花の色 | 赤、ピンク、白、複色 |
原産地 | 日本 |
開花期 | 11~12月、2~4月 |
日本が原産の椿は、日本の気候に合わせて発達してきたため日当たりや寒さといった環境への適応がしやすい花木といえます。お庭に植えるだけでなく、ベランダなどの限られたスペースでも鉢植えとして楽しむことができます。
椿の葉は冬でも枯れず、青々としています。このことから「強葉木(つばき)」「艶葉木(つやはき)」と呼ばれ、それが転じて椿になったという説があります。もう一つには葉が厚めであることから「厚葉木(あつばぎ)」と呼ばれたのが転じた、という説もあります。いずれにせよ、美しい花がありながら葉に注目された名前というのは意外ですね!ちなみに漢字の「椿」は春に花が咲くことに由来します。
別名では藪椿(ヤブツバキ)、耐冬花(タイトウカ)とも呼ばれます。
椿(ツバキ)と山茶花(サザンカ)の見分け方
椿と見分けがつきにくいのがサザンカです。見分け方はいくつかありますが、花の咲き方、散り方がわかりやすいでしょう。また、サザンカの方が少し早めに咲きだします。
椿(ツバキ) | 山茶花(サザンカ) | |
---|---|---|
花の咲き方 | カップ状に咲く | 完全に平開して咲く |
花の散り方 | 花首からポトリと落ちる | 花びらがバラバラと散る |
開花時期 | 11~12月、2~4月 | 10~2月 |
葉の大きさ | 5~12cm | 3~7cm |
葉の様子 | ツヤがある | ツヤがなくふちがギザギザしている |
葉柄(ようへい) ※葉と茎をつなぐ部分 | 毛が生えていない | 細かい毛が生えている |
香り | なし | あり |
椿(ツバキ)の種類
ピンク色の一重咲き 太郎冠者
太郎冠者(タロウカジャ)は古典椿の一種で、江戸時代から茶花として親しまれている品種です。
開花時期が12~4月と長く、その花の色は紫を帯びたピンク色をしています。花びらの数は少なく、雄しべが退化したことで花粉が出ない筒咲き(またはラッパ咲き)という開き方をします。花粉が落ちないため、花びらが黄色く汚れることがありません。
赤に白の覆輪が美しい一重咲き 玉之浦
『幻の椿』ともいわれる玉之浦(タマノウラ)は、長崎県五島で生まれたヤブツバキの一種です。
開花時期は1~4月で、鮮やかな濃い紅色に白い縁どりされた、コントラストの美しい花を付けます。一重で筒咲きの姿は清楚かつ可憐な印象です。日本国内のみならず、海外でも人気の品種です。
バラのように華やかな赤の千重咲き 紅乙女
紅乙女(コウオトメ)は古い園芸品種で、江戸時代から人々に愛され続けています。
開花時期は2~5月で、丸い花びらが重なり合うように咲く千重(センエ)咲きと呼ばれる開き方をします。また、黄色い雄しべが見えないのも特徴の一つです。華やかな咲き方に加え、目を惹く濃い紅色の花は、多くの人々を魅了しています。
花弁が細長い黄色の八重咲き 黄蓮華
椿の中でも希少とされる品種が、黄蓮華(キレンゲ)です。
椿の中では珍しい黄色系で、八重咲きの花を付けます。咲き始めから色がだんだん白へと変化するので、毎日眺めても飽きないことでしょう。開花時期が3~4月と短いのも、この品種の珍しさを助長させています。寒さに弱いので、冬季は室内で管理します。
白地に紅の小絞りが入る一重玉咲き 玉霞
玉霞(タマガスミ)は、花びらが雄しべを包み込むような『抱え咲き』という咲き方をする希少種です。
開花時期は11~4月ごろで、白~淡いピンク色のマーブル模様と、丸い形がなんとも愛らしい品種です。同じ玉霞でも、色合いや模様の入り具合が木々によって変わるのも注目したいポイントです。
椿(ツバキ)の育て方のポイントやコツは?
日本の気候、風土に適応しやすい椿ですが、花付きをよりよくしたい場合には半日陰で風が当たりすぎない場所を選びましょう。冬場の冷たい乾燥した風は、つぼみが落ちてしまったり、枯れる原因になるためです。寿命の長い椿はどんな土壌でも適応し、日陰でも日向でも育つことができますが、よりよい環境は西日が当たらず、乾燥しすぎない場所です。鉢植えの場合も同じような、半日陰で風が当たりすぎない場所が好ましいですが、花芽がつく6~7月は日当たりの良い場所に移動させましょう。
椿(ツバキ)の苗木の植え付け時期と方法は?
お庭などに椿を植える際は苗木から育てるのが一般的なようです。種まきの場合は花が咲くまでに5~6年かかることがあるので根気が必要です。ご家庭で既に椿の木があって、種が採取できる方は種から育てる方法にもチャレンジしてみましょう!
苗木から育てる方法
苗木を選ぶ際は、葉が黄色くなっていないものを選びましょう。葉が黄色いのは肥料が足りていないためです。また、蕾が多い苗木も避けましょう。
椿の苗木には苗木、中苗、大苗があります。苗木は鉢植えでじっくり生長を楽しみたい方におすすめですが、庭植えには向いていません。中苗は15~18cmポットで販売されており、庭植えに向いています。大苗は樹齢7年以上でぽ20cm以上のポットまたは地堀苗で販売されています。すぐにお庭に植えたい方、切り花をたくさん楽しみたい方におすすめです。
椿の植え付けの時期は長く、春は2月中旬から6月中旬まで、秋は9~11月までが適期です。真夏を真冬を除いた時期、と覚えておきましょう。
地植えの場合は、苗の2倍ほどの深さ、幅の穴を掘り、腐葉土やたい肥、緩効性の肥料を元肥として混ぜこんでおきます。苗木を穴の中央に置き、根鉢が半分隠れる程度まで土を入れ、土を固め、穴から水があふれない程度に水を与えます。土が水を吸い込んだら残りの土を入れて軽く抑え、水を与えます。苗が不安定な場合は支柱を使いましょう。
種から育てる方法
椿の種は10~11月頃に採取できます。種は花後にできる実の中にあります。地面に落ちた種は乾燥して発芽しにくいので、地面に落ちる前の実から種を取りましょう。実は2~3日陰干しし、皮が割れたら中にある3~6個の黒い実を取り出します。すぐに種まきしない場合はビニール袋に冷蔵庫で保管し、春に種まきをしましょう。拾った種は1日ほど吸水させてから種まきに臨みましょう。
土は市販の種まき用の土など新しいものを用意します。種を蒔いて土をかぶせ、水をたっぷりと与えます。10~11月にまいた種は翌年の春ごろに発芽します。発芽まではこまめに水やりをしましょう。発芽した後は1本ずつ分けて植え替えます。この時根を半分ほど切ってから植え替えると根の伸びがよくなり、強い苗木に育ちます。
椿の発芽率は高くないので、予定より多めに種をまいたり、ペンチなどで殻にひびを入れてから蒔くようにしましょう。
椿(ツバキ)の土作り水やり肥料の与え方は?
椿(ツバキ)に適した土
椿は基本的に土質を選ばず、どんな土でも育てられますが、より生長しやすくするために水はけのよい、有機質な弱酸性の土を選ぶようにしましょう。具体的には排水性、保水性に優れている赤玉土や鹿沼土に有機質の腐葉土を半分ずつ混ぜ込んだ土を用意しましょう。
鉢植えの場合は大きすぎる鉢は枝ばかりが生長してしまうので、根鉢より一回り、大きくても二回り大きな鉢を選びます。鉢底にゴロ土を敷いて準備した土を入れ苗木を植え付けます。
椿(ツバキ)の水やり
椿は適度な乾燥を好む、ということを覚えておきましょう。過度の水やりは根腐れの原因になってしまいます。