
いちご(苺)のランナーで子苗をつくろう。苗づくりの手順や育てるポイント

いちごの苗を増やすには、株の根元から生えてくるランナーを利用します。あらかじめ手順を押さえておけば、比較的簡単に苗を増やして、翌年以降もおいしいいちごを収穫できるでしょう。ランナーの扱い方や、子株の増やし方を紹介します。
いちご(苺)の苗から出てくるランナーとは

いちごを育てていると、株の根元からヒョロヒョロとしたつるのようなものが伸びてくることがありますが、このつるを「ランナー」と呼びます。ランナーが出てくる理由や、扱い方を見ていきましょう。
ランナーの向きで植え付けを工夫できる
園芸店で入手したいちごの苗の根元をよく見ると、ランナーを切った後が見つかることがあります。ランナーは、いちごの株を増やすためになくてはならない存在で、「ほふく茎」「ほふく枝」「走出枝」などと呼ばれることもあります。
親株のランナーがある方とは『逆側』の子株のランナーの方に花が咲き実がなるので、苗を植え付けるときは、親株のランナーの反対側に日があたるように植えるとよく育つでしょう。
また、畑や庭に植えるときは、親株のランナーの反対側が通路側を向くように植えると、実を収穫しやすいです。
子株をつくって増殖可能
いちごはランナーを伸ばし、子株を増やしていきます。ランナーを通じて親株から養分をもらった子株が育って親株となり、翌年、その翌年と実を付けるのです。
種から育てることもできますが、丈夫に育てることが難しいので『子株で増やすことが一般的』だといえます。
おいしいいちごの実を育てるには養分を親株に集めることが大事なので、収穫するまではランナーを放置せず切りましょう。
ランナーで子株を増やすという構造は、いちごに限った話でなく、公園や花壇に咲く花やほかの観葉植物にも意外と多く存在しています。
苗づくりの時期と準備

いちごの子株を増やす時期は、収穫を終えてからです。実が成長している時期にランナーを放っておくと、養分を取られてしまうので注意しましょう。苗づくりに適した時期や準備の方法を紹介します。
親株を選ぼう
複数の親株を育てていちごを収穫することが一般的ですが、いちごを栽培していると、苗によって丈夫なものとそうでないものがあることに気づきます。
どんな親株を選ぶかで、次世代の苗の丈夫さが変わってくるので、慎重に選びましょう。
よい親株を選ぶには、たくさんの実が付いたものを選びます。ここで小さく弱々しい株ではなく、『大きく立派な株』を選ぶことがポイントです。
病気にかかった苗や、実が大きく育たなかった苗を選ぶと、その性質を受け継いだ子株ができてしまうので注意しましょう。
子株を選ぼう
親株を選んだら、次は丈夫に育つ子株を見極めて選びます。一見、子株はみんな同じように見えますが、どれを選ぶかによって育てやすさが変わってくるのです。
ランナーにはいくつもの子株ができますが、親株から一番近いものは避けます。親株に最も近い子株は親株の病気を受け継いだり、成長が不安定になったりすることが多く、4番目以降は成長がよくないことがあるため、『2~3番目の子株』を選びましょう。
苗づくりの手順

苗づくりのポイントさえ押さえていれば、初めてでも苗を増やすことはそれほど難しくありません。よい子株の選び方が分かったら、苗として親株から分離するための手順を押さえていきましょう。
ポットにピンを使って子株を植え付ける
いちごを地面で育てる場合は、ランナーが這いながら地面を進んで子株が自然に広がっていきますが、プランターで育てる場合はそうもいきません。
苗づくりをするときに必要になるのは、3号のビニールポット・培養土・子株の三つです。手順は3ステップで、まずは培養土をポリポット縁から約2cmほどのところまで入れます。次に、培養土を入れたビニールポットを、育てたい子株の下に置きます。最後に、U字型に曲げたピンやビニールタイで株元を土に固定するだけで完成です。
固定するときに、新芽を傷付けないように注意します。その後は、根付くまで乾燥しないように水やりをしましょう。土の表面が乾いたら、たっぷりと水をやります。
根付いたらランナーを切る
子株を植えてから1週間くらい経過し、根が定着したら親株と切り離しましょう。苗の根元を優しくゆすってみて、ぐらつかなければ根付いています。ランナーを数cm残して切ると、植え付けのときに方向が分かりやすいです。
切り離した株は、『日当たりがよく風通しがよい場所』で、乾燥に注意しながら育てましょう。親株から切り離したばかりの苗は弱いので、育て方に注意が必要です。
小さいポットで育てているうちは土の量が少ないので、どうしても乾燥しやすくなってしまいます。特に、夏の暑い時期は乾燥しやすいので、朝夕に葉がしおれていないかよく観察しましょう。
苗づくりを成功させるには、小まめに様子を見ることが重要です。
苗の植え付けは10月から11月頃
暑さが過ぎる時期まで、子株をしっかりと育てます。植え付けの時期が早すぎても遅すぎてもその後の生育によくないので、10月から11月頃がおすすめです。
植え付けには、市販されている野菜用の培養土を使うと簡単です。自分で配合した土を使う場合、赤玉土6:腐葉土等4の割合でつくった土を使うとよいでしょう。
株間は20cm以上あけて植え、風通しをよくします。間隔をあけずにつめて植えてしまうと、病気にかかりやすくなるので注意しましょう。
プランターは20cm程度の深さがあるものを選び、よく成長するように「クラウン」と呼ばれる根元の部分を出して植えることがポイントです。
いちご(苺)の苗を上手に育てるポイント

いちごの苗を上手に育てるポイントさえ押さえておけば、栽培を成功させやすくなります。いちごを育てる環境や注意点など、丈夫に育てるためのコツを見ていきましょう。
育てる環境を整えよう
植え付け後は、しっかりと水やりをすることが大事です。表面の土を触って乾燥していたら、鉢底から流れ出るくらい、たっぷりと水やりをします。1~2週間で根が伸び、新しい葉が出てくるでしょう。
日当たりが悪いと生育がよくないので、プランターを移動させたり高さを工夫したりして『よく日にあてること』がポイントです。
12月以降の寒い時期は株が休眠期に入りますが、水やりは続けます。いちごは水はけのよい環境が適しますが、乾燥しすぎもよくないため、乾燥する前に水を与えましょう。冬は暖かい時期に比べて土が乾燥しにくいため、水やりの回数は少なくなります。
野菜用の培養土などすでに肥料が含まれているものを使う場合は、元肥はいりません。追肥を行う場合は2月下旬頃から3月の時期がよいとされています。
夏の日差しに注意
いちごは日当たりを好みますが、乾燥には弱い植物です。西日が強くあたる場所に置いて水切れを起こしてしまうと、夏を乗り切れません。
盛夏は朝に水やりをしても、夕方に土が乾いてしまっていることも多いので、水やりの頻度を増やしましょう。
暑い時期だけでも半日陰に置くと、乾燥しすぎを防げます。日当たりがよすぎる場合、日陰をつくってあげましょう。日よけカバーを使用すれば、人工的に半日陰の環境をつくれます。
冬の寒さも実は大切
いちごは耐寒性が高い植物です。冬の寒さにあてることで丈夫に育つので、防寒対策はしません。寒さに触れ、日照時間が短くなると花芽が育って、実がつきます。
冬場は休眠期に入るので目立った成長は見られませんが、よく日があたる場所に置いて、土の表面が乾いたらしっかりと水をやりましょう。
枯れた葉や変色した葉があれば取り除きます。また、雑草を引き抜くことも忘れないようにしましょう。
まとめ
いちごの苗から出てくるランナーは、子株を増やすために必要です。翌年もおいしい実を収穫したい場合、子株を育てましょう。
たくさんの実を付けた丈夫な親株を選び、親株から2~3番目の子株で苗づくりをすると、丈夫な苗に育ちます。実の収穫を終えたら、ランナーを切らずに伸ばして子苗をつくりましょう。
プランターで育てている場合、培養土を入れたビニールポットを利用すると簡単に子苗を増やせます。
夏に水切れしないように注意しながら、10~11月頃まで子苗を育ててから植え付け、春になったら再びおいしいいちごを収穫しましょう。