エリカの育て方と栽培方法|手入れの仕方や増やし方、注意点も
エリカは秋から春の、花の少ない季節に長く咲いてくれる花です。小さくかわいらしい花をたくさん付け、花色も豊富。開花後はどんどん落ちる花がらを取り除き、こまめにお世話をします。品種によって暑さ・寒さへの強さが異なる点に注意しましょう。
エリカを育てる前に知っておきたいこと
エリカはヨーロッパやアフリカに自生しており、原種が約750種あるとされる花木です。ほとんどの種は高さ1m以下で、まれに2mを超える種があります。
日本に入ってきたのは大正時代で、現在は観賞用として数十種類が出回っています。学名の「Erica」はラテン語の「Eric(エリック・箒)」から。また、日本では「エリカ」以外にも実がスギの花のように見えることから「ハナスギ」、花の中心にある黒い葯の様子から「ジャノメ(蛇の目)エリカ」とも呼んでいます。
エリカの別名である「Heath(ヒース)」は荒野の意味で、荒れた土地でもたくましく育つ様から付けられました。
エリカの基本情報
エリカの基本情報は以下の通りです。
科・属 | ツツジ科、エリカ属 |
和名 | エリカ |
英名 | Heath |
花の色 | ピンク、赤、黄、白など |
学名 | Erica |
原産地 | ヨーロッパ、南アフリカ |
開花時期 | 10〜6月 |
エリカの特徴
常緑性の樹木であるエリカは夏の高温多湿は苦手で、日本では秋から春の花の少ない季節に花壇を賑わせてくれます。
花色はピンクのほか赤や黄、白などがあり、花の形はラッパのようなものやスズラン状のものなどさまざま。幹がスッと伸びていて、たわわに咲く花と針葉樹のような葉がかわいらしく見えます。
たくさんつける枝は柔らかく繊細で、折れやすいのが特徴です。細い線状や針状の葉は遠くからはスギの木のように見え、冬になると褐色を帯びます。
花冠には花が終わっても残る縮存性があるので、ドライフラワーの材料にも。ヨーロッパ原産の品種は、寒冷地ではグラウンドカバーに利用されています。
エリカの種類と選び方
ヨーロッパ原産のエリカは花が小さめで、紅や白色のものが多くあります。高温多湿の環境には不向きで、水をやりすぎると根腐れしてしまいます。日本では、鉢植えが少しの品種流通している程度のようです。
「エイジュ(栄樹)」は英語名「brier(briar、ブライア)」とも呼ばれる品種で、地中海沿岸地域や東アフリカに分布しています。開花時期は3〜7月ごろで、温室栽培向け。ヒースに似た白い花を付けることから、「White heath(ホワイトヒース)」の別名もあります。
南アフリカ原産のエリカは花の大きさや形、色が豊富です。日本で多く普及している「ジャノメエリカ」は南アフリカ原産で、高温多湿と-5℃くらいまでの低温環境下にも耐えられます。
南アフリカ南部に分布している「エリカ・セリントイデス」は、暖地であれば地植えでも越冬できます。開花期は11〜4月ごろで、四季咲きの性質。花は2〜3cmほどの筒状をしており、赤やオレンジ、ピンクなどの色を付けて茎の先端から垂れ下がるように咲きます。
「メランセラ」はジャノメエリカに似ていますが、来歴が不明の園芸品種です。開花時期が9〜3月ごろの秋咲きで、高温多湿に耐えるため日本でも鉢植えとして販売されています。
「スズランエリカ」の本来の開花期は2〜5月ですが、促成栽培された鉢植えはツリー仕立てにされてクリスマス向けに。「ブライダルヒース」は暖地でなら屋外で冬越しできますが、高温多湿には弱いので夏は屋内の涼しい場所で管理するとよいでしょう。
エリカを育てる時に必要な準備
ジャノメエリカは地植えもできますが、それ以外の品種なら鉢植えが育てやすくおすすめです。地植えなら風通しと日当たりの良い場所に、鉢植えのときは品種によって季節ごとに適した環境下に移動してやりましょう。
弱酸性で、水はけと水もちの良い土がエリカには向いています。花やつぼみが多いポット苗を選ぶと、すぐに花を楽しめるでしょう。
日当たり・置き場所
エリカは、基本的には風通しと日当たりの良い場所を好みます。ジャノメエリカは地植えでも育ちますが、それ以外の品種は季節によって置き場所を変えられる鉢植えの方が向いているでしょう。
通常は戸外の日当たりの良い場所に置いてやり、夏は直射日光が当たらない日陰の涼しい場所、冬は屋内の明るい窓辺に移動するとよいでしょう。品種によって耐暑性と耐寒性が異なるので、購入時に確認することをおすすめします。
用土・土作り
根が細いエリカは乾燥と過湿で痛みやすく、弱酸性の土を好みます。自分で作る場合は夏場の根腐れを防げるよう、鹿沼土4:赤玉土4:ピートモス2、または小粒の鹿沼土7:ピートモス3で配合して水はけと水もちを良くしましょう。荒地でも育つほどの丈夫な木なので、市販の培養土を使っても十分に育てられます。
苗の準備
ポット苗を購入するときは花やつぼみがたくさんあるもの、葉の色が濃いものを選びましょう。新芽が垂れ下がっているものは水切れのおそれがあるので、避けた方が無難です。
エリカの育て方・栽培方法
エリカの植え付けは4〜5月がよいでしょう。地植えなら植え付け直後の水やりは不要で、植え替えも必要ありません。
鉢植えの場合は土が乾いたら水をたっぷりとあげ、根詰まり防止のために1〜2年に1回は植え替えをします。エリカは挿し木で増やせるので、剪定で切った枝でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
エリカの苗の植え付け時期と方法
エリカの苗の植え付けは、暖かくなり始めた4〜5月が適期です。地植えのときは土に元肥となる肥料を混ぜ込んでから苗を植え付けましょう。ポットから苗を取り出したら、根の周りの土を手でほぐしてからにします。
鉢植えにするときは、ポット苗よりもひと回り大きな鉢に植え付けましょう。鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷き、土を鉢の高さの1/4くらいまで入れます。真ん中に苗を置いたら、土を鉢の縁から2〜3cm下まで足しましょう。最後に土全体にたっぷりの水をあげると、ポット苗の土と鉢の土とがなじみます。
エリカの水やり・肥料の与え方
エリカを地植えした場合は、植え付け直後以外の水やりは不要です。ひどい乾燥が気になったときだけ、霧吹きで葉に水をかけましょう。鉢植えの場合は土が乾いたのを確認してから、鉢底から水が流れるまでたっぷりと水をあげます。
標準的なエリカの場合は生育期の1月と9月に緩効性肥料を1回ずつ、もしくは液肥を月に1〜2回与えます。地植えなら同時期に骨粉や油かすなどの有機性肥料をプラスし、株元から少し間隔を空けた場所に混ぜ込むとよいでしょう。
エリカの植え替え・鉢替えの時期と方法
鉢植えしたエリカは根詰まりを防ぐため、1〜2年に1回はひと回り大きな鉢に植え替えましょう。植え替えの適期は植え付けと同じ4〜5月で、作業方法も同じです。
地植えのエリカは基本的には植え替えはしません。やむをえず植え替えをするなら、根付かないこともあると理解した上で実行しましょう。
エリカの手入れ・剪定・切り戻しの時期と方法
エリカは、花が終わった5〜7月ごろに剪定しましょう。株全体の1/3〜1/2ほどの枝を切って半分の高さにし、開花した時よりもさっぱりとさせます。地植えで高く伸びた株は、伸び枝だけを切って詰めるとよいでしょう。
エリカの増やし方
エリカを剪定したときに切った枝を使うと、挿し木で増やせます。枝の下部分の葉を取り除き、水を入れたコップなどに浸けておきましょう。その後、切り口に発根剤を付けてからポットや鉢などの土に挿します。日陰に置いてビニールなどで覆い、土が乾いたら水をあげましょう。枝の葉が大きくなったら、植え付け用の苗にできます。
エリカを育てるときの注意点
エリカにはアブラムシとカイガラムシがつきやすいので、見つけ次第駆除しましょう。あらかじめ殺虫剤を撒いておくと、防除対策になります。花がらはこまめに除き、株の風通しと日当たりを確保することも大切です。