スミレの種類と育て方。押し花・食用にミステリアスな魅力を探ろう

2020 11/17
スミレの種類と育て方。押し花・食用にミステリアスな魅力を探ろう

『スミレ』は春に可愛らしい花を咲かせます。『万葉集』で詠まれたり人名に採用されたりと、古くから日本人に親しまれると同時に、ミステリアスな魅力もある花です。そんなスミレは家庭でも育てられます。種類や育て方を知り、実際に自宅で栽培しましょう。

目次

スミレはどのような植物?

スミレはどのような植物?

紫色の小さい花を咲かせることで知られるスミレですが、詳しいことは知らない人も多いのではないでしょうか。自宅で育てる前に、基本情報を押さえておきましょう。

基本の情報

スミレは、『スミレ科・スミレ属』の多年草で、パンジーやビオラと同じ分類に属する仲間です。学名から『マンジュリカ(mandshurica)』と呼ばれることもあります。

日本や朝鮮半島、中国といった東アジア圏が原産地です。日本では、北海道から沖縄までの各地で自生しています。紫色の花のイメージが一般的ですが、ピンク・黄色・白などの花を咲かせる品種もあります。

開花時期は3~5月頃で、1本の茎につき約2cmの小さな花を1輪付けます。スミレの花には蜜があり『距(きょ)』と呼ばれる袋状の部位にたまっています。蜜を求めて花に潜り込む虫に花粉を付け、受粉を促す仕組みです。

花言葉

スミレには、花全体の花言葉と色別の花言葉があります。

スミレ全体の花言葉は『小さな幸せ』『謙虚』『誠実』です。同時期に開花するサクラに比べてひっそりと花を咲かせるイメージが、花言葉の由来とされています。

目にする機会の多い紫色の花言葉は『貞操』『愛』です。西洋では『あなたのことで頭がいっぱい』という花言葉が付いています。『あどけない恋』『無邪気な恋』『純潔』と、白色の花言葉はピュアな恋を連想させます。

ピンク色の花言葉は『希望』『愛』、黄色の花言葉は『つつましい喜び』『田園の幸福』です。日本には青色の花言葉はありませんが、西洋では『用心深さ』『愛情』とされています。

2つの種類と主な品種

2つの種類と主な品種

スミレには『有茎種(ゆうけいしゅ)』と『無茎種(むけいしゅ)』の2種類があります。それぞれの特徴と主な品種を知り、栽培する品種を選ぶ参考にしましょう。

有茎種

茎を伸ばし、その先に葉を付けたり花を咲かせたりするのが『有茎種』です。有茎種の場合、スミレの葉は茎に交互に付きます。葉の形はさまざまで、細長いものやハート型のものなどがあります。

『タチツボスミレ』『アケボノスミレ』などが、有茎種の例です。タチツボスミレは、日本でもメジャーな品種の一つといえるでしょう。花の色は淡い紫色をしています。

アケボノスミレは、明るい草原や森で自生する品種です。曙(明け方)の空のような淡いピンク色の花を咲かせることが、品種名の由来になったとされています。

無茎種

茎を伸ばさず、根本で葉を付けたり花を咲かせたりするのが『無茎種』です。有茎種同様、無形種の葉の形も多岐にわたります。

『アリアケスミレ』『ノジスミレ』などが、無茎種の例です。アリアケスミレは、比較的見かける機会の多い品種といえるでしょう。長めの葉が特徴で、花は白色です。河川敷など、多湿な環境を好む傾向にあります。

ノジスミレは、紫色の花を咲かせる品種です。波打つ花びらの端と強めの香りが特徴といえるでしょう。日当たりのよい低地を好むため、道端で自生している花を見られる場合もあります。

スミレの育て方

スミレの育て方

自宅でスミレを育てるには、どのようにすればよいのでしょうか。栽培する方法や場所、水や肥料のあげ方を押さえ、きれいな花を咲かせましょう。

栽培方法

スミレには『種』からと『苗』からの2種類の栽培方法があります。おすすめの時期は、種からの場合が1~2月頃、苗からの場合が2~3月頃または9月頃です。

種からの場合、発芽に時間のかかる『完熟種子』は、1度低温に晒すと発芽を促せます。冷蔵庫で約1~2カ月冷やしてから種をまきましょう。『未熟種子』は、種まきから約1週間で発芽します。種まきから開花までは短くて約2カ月です。

複数の苗を地植えする場合、株同士に約20cmの間隔をあけます。鉢植えの場合、苗が入っていたものより1回り大きく、深さのある容器がおすすめです。苗の成長に合わせて、大きめの鉢に移し替えましょう。

育てる場所

『地植え』でも『鉢植え』でもスミレは栽培可能です。地植えの場合『日当たりのよさ』を優先して育てる場所を選ぶとよいでしょう。

ただし、スミレは高温多湿が苦手なため、夏場は木陰になるような『風通しがよくて涼しい場所』に植えるのがおすすめです。

鉢植えは場所を変えられるため、季節に合わせて置き場所を変えましょう。地植え同様に、日当たりのよい場所が鉢植え栽培でもおすすめです。

直射日光のきつい夏場の午前中は、明るい日陰に移動させるか、日よけで遮光するとよいでしょう。

水やり

スミレの水やりの頻度は、地植えか鉢植えかで異なります。地植えの場合、特に水やりをする必要はありません。ただし、乾燥した日が続いたときは、たっぷり水を与えましょう。また、植え付け直後も水やりが必要です。

鉢植えの場合、土の表面が乾いたときにたっぷり水やりをします。水の量は、鉢の底から水が流れるくらいが目安です。多湿による根腐れを防ぐためにも、土の表面を手で触って確認するとよいでしょう。

水を与えるときは、花や葉ではなく土を湿らせるように水をかけるのがポイントです。

土や肥料

スミレが好むのは『水はけのよい中性の土』です。日本の土は弱酸性を示す傾向にあるため『苦土石灰(くどせっかい)』や『牡蠣殻』で中和するとよいでしょう。

土を自作する場合は『培養土・腐葉土=7・3』や『鹿沼土・腐葉土・軽石=6・3・1』の比率がおすすめです。市販の土なら、パンジーやビオラ用の土が適しています。

地植えの場合、特に肥料をあげなくても構いません。施肥するときは、9~10月頃に『緩効性肥料』を与えましょう。

鉢植えの場合、夏から秋にかけて『液体肥料』を約2~3回与えます。与える肥料は、リン酸とカリウムを多く含むものがおすすめです。リン酸は花の成長促進、カリウムは根を丈夫にする効果が期待できます。

かかりやすい病害虫

かかりやすい病害虫

植物には種類によってかかりやすい病気や害虫があります。スミレのかかりやすい病害虫を把握し、せっかく育てた花を弱らせてしまう前に対策をしましょう。

病気

スミレがかかりやすい病気は『そうか病』『うどんこ病』です。これらの病気に花がかかったら、患部を切り取って捨てましょう。

そうか病は、晩春から初夏と秋に発生する傾向にあります。葉や茎に白いかさぶた状のブツブツができる病気です。雨に濡れないようにするのが有効な予防策といわれています。

うどんこ病は、5~8月頃に発生します。葉の表面に白いカビが生える病気です。うどんの粉をかけたように白くなることが、病名の由来とされています。

白くかびた部位は光合成がうまく行えず、葉が枯れる原因になります。日当たりと水はけのよい場所で植物を育てるのが予防策として有効です。

害虫

『ツマグロヒョウモンの幼虫』『ネコブセンチュウ』『アブラムシ』『ヨトウムシ』が、スミレの害虫の例です。いずれも花や葉に付いているのに気づいたら、取り除いて薬剤をまきましょう。

春に発生するアブラムシは汁を吸って植物の生育を阻みます。春から秋に発生するマツグロヒョウモンの幼虫とヨトウムシは、葉を食い荒らす虫です。マツグロヒョウモンの幼虫は、特にスミレ類を好んで食べます。

根こぶ線虫と表記されるように、ネコブセンチュウは細長い虫です。土の中で生息し、春から秋にかけて発生します。ネコブセンチュウが寄生すると、根が傷んで生育に影響が出るため注意しましょう。

スミレはミステリアスな植物

スミレはミステリアスな植物

数ある花でも比較的知名度の高いスミレですが、ほかの花ではあまり見られないミステリアスな一面を持っています。スミレの栽培にも関係するため、自宅で育てたい人はその一面を知っておくとよいでしょう。

種ができる仕組み

一般的に、花が実を付けるには、開花してから受粉する必要があります。しかし、種のできる仕組みが特殊なことでスミレは知られています。

スミレは『閉鎖花(へいさか)』に分類され、花びらを閉じたまま自家受粉で結実可能で、『閉花』とも呼ばれます。ホトケノザも閉鎖花の仲間です。

閉鎖花は花を咲かせなくても実を付けられるため、夏や秋、冬でも種を作れます。また、ほかの種類の花と交雑することがないため、親と同じ品種の花を咲かせられるでしょう。

種を遠くに運ぶ方法

種を作る仕組みだけでなく、種を遠くに運ぶ方法もスミレは独特です。

熟すにつれて上向きに開いたさやが三つに割けると、種がむき出しになります。しぼむようにさやが閉じる圧力によって、種が飛び出します。種は3m以上飛ぶこともあるようです。

自宅の庭の敷地内でスミレを増やしたい人は、先に種を収穫しておきましょう。

また、アリに種を運ばせるという方法もあります。スミレの種の表面を覆う糖質の甘さに惹かれたアリが、遠くに種を運んでくれます。糖質を摂取し終えればアリは種を置いていくため、その場で発芽する仕組みです。

まだまだあるスミレの楽しみ方

まだまだあるスミレの楽しみ方

栽培して開花時期に愛でるだけがスミレの楽しみ方ではありません。鑑賞以外の方法を知り、2倍・3倍にスミレを楽しみましょう。

料理して食べる

スミレは『食べられる花』としても知られています。和え物やおひたしといった和食に使うことが多いですが、サラダに生のまま入れてもよいでしょう。

クセのない味で食べやすいだけでなく、食卓に彩りを加えてくれます。ただし、ニオイスミレやパンジーは種や根に毒があるため、食べるのは避けましょう。

自宅にある材料で作れるスミレの料理でおすすめなのは『砂糖漬け』です。金平糖のような食感になり、お菓子感覚で食べられます。

水洗いして水気を拭き取ったスミレの花全体に、刷毛で卵白を塗ります。その上からグラニュー糖をまぶし、一晩寝かせれば完成です。紅茶に浮かべると、リッチな気分を味わえるでしょう。

押し花にする

花びらの薄いスミレは、押し花に適した花の一つです。栞にしたり写真立てに飾ったりする以外に、透明のスマートフォンケースやアクセサリーで押し花を楽しむ人も増えています。

押し花の作り方は、じっくり重石で水分を抜くだけではありません。電子レンジやアイロンなどの電化製品を使って短時間で作る方法もあります。ただし、これらの方法は花を焦がすリスクもあるので注意が必要です。

きれいな押し花を作るコツは、枯れ始める前の新鮮な花を使うことです。花は茎の根本の近くから切り落としましょう。

また、押し花はとてもデリケートです。長期間楽しむなら直射日光や湿気を避け、ラミネートやレジンでコーティングしましょう。

まとめ

スミレは種の付き方や種を運ぶ方法が特徴的な花です。種からでも苗からでも育てられますが、ガーデニング初心者なら苗からの方が育てやすいでしょう。

咲いた花は観賞する以外にも、食べたり押し花にしたりしても楽しめます。スミレの新たな魅力に出会えるかもしれません。

主な種類や正しい育て方を知り、自宅で元気なスミレの花を咲かせてみましょう。

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