スミレの種類と育て方。押し花・食用にミステリアスな魅力を探ろう
『スミレ』は春に可愛らしい花を咲かせます。『万葉集』で詠まれたり人名に採用されたりと、古くから日本人に親しまれると同時に、ミステリアスな魅力もある花です。そんなスミレは家庭でも育てられます。種類や育て方を知り、実際に自宅で栽培しましょう。
スミレはどのような植物?
紫色の小さい花を咲かせることで知られるスミレですが、詳しいことは知らない人も多いのではないでしょうか。自宅で育てる前に、基本情報を押さえておきましょう。
基本の情報
スミレは、『スミレ科・スミレ属』の多年草で、パンジーやビオラと同じ分類に属する仲間です。学名から『マンジュリカ(mandshurica)』と呼ばれることもあります。
日本や朝鮮半島、中国といった東アジア圏が原産地です。日本では、北海道から沖縄までの各地で自生しています。紫色の花のイメージが一般的ですが、ピンク・黄色・白などの花を咲かせる品種もあります。
開花時期は3~5月頃で、1本の茎につき約2cmの小さな花を1輪付けます。スミレの花には蜜があり『距(きょ)』と呼ばれる袋状の部位にたまっています。蜜を求めて花に潜り込む虫に花粉を付け、受粉を促す仕組みです。
花言葉
スミレには、花全体の花言葉と色別の花言葉があります。
スミレ全体の花言葉は『小さな幸せ』『謙虚』『誠実』です。同時期に開花するサクラに比べてひっそりと花を咲かせるイメージが、花言葉の由来とされています。
目にする機会の多い紫色の花言葉は『貞操』『愛』です。西洋では『あなたのことで頭がいっぱい』という花言葉が付いています。『あどけない恋』『無邪気な恋』『純潔』と、白色の花言葉はピュアな恋を連想させます。
ピンク色の花言葉は『希望』『愛』、黄色の花言葉は『つつましい喜び』『田園の幸福』です。日本には青色の花言葉はありませんが、西洋では『用心深さ』『愛情』とされています。
2つの種類と主な品種
スミレには『有茎種(ゆうけいしゅ)』と『無茎種(むけいしゅ)』の2種類があります。それぞれの特徴と主な品種を知り、栽培する品種を選ぶ参考にしましょう。
有茎種
茎を伸ばし、その先に葉を付けたり花を咲かせたりするのが『有茎種』です。有茎種の場合、スミレの葉は茎に交互に付きます。葉の形はさまざまで、細長いものやハート型のものなどがあります。
『タチツボスミレ』『アケボノスミレ』などが、有茎種の例です。タチツボスミレは、日本でもメジャーな品種の一つといえるでしょう。花の色は淡い紫色をしています。
アケボノスミレは、明るい草原や森で自生する品種です。曙(明け方)の空のような淡いピンク色の花を咲かせることが、品種名の由来になったとされています。
無茎種
茎を伸ばさず、根本で葉を付けたり花を咲かせたりするのが『無茎種』です。有茎種同様、無形種の葉の形も多岐にわたります。
『アリアケスミレ』『ノジスミレ』などが、無茎種の例です。アリアケスミレは、比較的見かける機会の多い品種といえるでしょう。長めの葉が特徴で、花は白色です。河川敷など、多湿な環境を好む傾向にあります。
ノジスミレは、紫色の花を咲かせる品種です。波打つ花びらの端と強めの香りが特徴といえるでしょう。日当たりのよい低地を好むため、道端で自生している花を見られる場合もあります。
スミレの育て方
自宅でスミレを育てるには、どのようにすればよいのでしょうか。栽培する方法や場所、水や肥料のあげ方を押さえ、きれいな花を咲かせましょう。
栽培方法
スミレには『種』からと『苗』からの2種類の栽培方法があります。おすすめの時期は、種からの場合が1~2月頃、苗からの場合が2~3月頃または9月頃です。
種からの場合、発芽に時間のかかる『完熟種子』は、1度低温に晒すと発芽を促せます。冷蔵庫で約1~2カ月冷やしてから種をまきましょう。『未熟種子』は、種まきから約1週間で発芽します。種まきから開花までは短くて約2カ月です。
複数の苗を地植えする場合、株同士に約20cmの間隔をあけます。鉢植えの場合、苗が入っていたものより1回り大きく、深さのある容器がおすすめです。苗の成長に合わせて、大きめの鉢に移し替えましょう。
育てる場所
『地植え』でも『鉢植え』でもスミレは栽培可能です。地植えの場合『日当たりのよさ』を優先して育てる場所を選ぶとよいでしょう。
ただし、スミレは高温多湿が苦手なため、夏場は木陰になるような『風通しがよくて涼しい場所』に植えるのがおすすめです。
鉢植えは場所を変えられるため、季節に合わせて置き場所を変えましょう。地植え同様に、日当たりのよい場所が鉢植え栽培でもおすすめです。
直射日光のきつい夏場の午前中は、明るい日陰に移動させるか、日よけで遮光するとよいでしょう。
水やり
スミレの水やりの頻度は、地植えか鉢植えかで異なります。地植えの場合、特に水やりをする必要はありません。ただし、乾燥した日が続いたときは、たっぷり水を与えましょう。また、植え付け直後も水やりが必要です。
鉢植えの場合、土の表面が乾いたときにたっぷり水やりをします。水の量は、鉢の底から水が流れるくらいが目安です。多湿による根腐れを防ぐためにも、土の表面を手で触って確認するとよいでしょう。
水を与えるときは、花や葉ではなく土を湿らせるように水をかけるのがポイントです。
土や肥料
スミレが好むのは『水はけのよい中性の土』です。日本の土は弱酸性を示す傾向にあるため『苦土石灰(くどせっかい)』や『牡蠣殻』で中和するとよいでしょう。
土を自作する場合は『培養土・腐葉土=7・3』や『鹿沼土・腐葉土・軽石=6・3・1』の比率がおすすめです。市販の土なら、パンジーやビオラ用の土が適しています。
地植えの場合、特に肥料をあげなくても構いません。施肥するときは、9~10月頃に『緩効性肥料』を与えましょう。
鉢植えの場合、夏から秋にかけて『液体肥料』を約2~3回与えます。与える肥料は、リン酸とカリウムを多く含むものがおすすめです。リン酸は花の成長促進、カリウムは根を丈夫にする効果が期待できます。
かかりやすい病害虫
植物には種類によってかかりやすい病気や害虫があります。スミレのかかりやすい病害虫を把握し、せっかく育てた花を弱らせてしまう前に対策をしましょう。
病気
スミレがかかりやすい病気は『そうか病』『うどんこ病』です。これらの病気に花がかかったら、患部を切り取って捨てましょう。