月下美人ってどんな花?花言葉や育て方についても解説

2020 11/19
月下美人ってどんな花?花言葉や育て方についても解説

『月下美人(ゲッカビジン)』は、はかなげでミステリアスなイメージで知られる花です。育て方のコツを押さえれば、自宅でも月下美人の花を咲かせられます。月下美人の花言葉・育て方・種類などを知り、実際に栽培するか検討しましょう。

目次

月下美人とは?

月下美人とは?

桜やチューリップなどに比べると、月下美人は一般的になじみのない植物といえます。育て方を知る前に、月下美人の概要を押さえましょう。

サボテン科の常緑多肉植物

月下美人はサボテン科・クジャクサボテン属の常緑多肉植物(じょうりょくたにくしょくぶつ)です。通年で幹や枝に葉を付ける常緑植物であると同時に、茎・葉・根に水分を蓄える多肉植物の特徴を持ちます。

学名はエピフィルム・オクシペタルム(Epiphyllum oxypetalum)で、メキシコの熱帯雨林地帯が原産地です。花を咲かせるには根気強く世話を続ける必要があるものの、育て方のコツを押さえて小まめにお世話すればガーデニング初心者でも花を咲かせられます。

名前の由来は?

月下美人という名前は、神秘的で美しい花の魅力を体現しています。この名前の由来としては、昭和天皇のエピソードが有力です。

大正時代の台湾で、当時皇太子だった昭和天皇がある花の美しさに魅了されました。帯同していた駐在大使に花の名前を昭和天皇が尋ねたところ、「月下の美人です」と答えたそうです。この逸話から、月下美人と呼ばれるようになったと伝えられています。

花や香りの特徴

花や香りの特徴

月下美人は花や香りに特徴があります。特に香りについては、別名の『月来香(ゲツライコウ)』に香の字が用いられるほどです。自宅で育てる前に、月下美人の特徴を把握しておきましょう。

直径20~25cmほどの白い花

月下美人は、直径20~25cmほどの白い花を咲かせます。ボウリングのボールが直径約22cmで、開いたときの花とほぼ同じ大きさです。家庭で育てる花としては、かなり大きい部類に入るでしょう。大きな花を咲かせるのは、コウモリの受粉への適応が理由とされています。

つぼみの時点で花はうつむいているものの、開花日が近づくにつれてつぼみは上向きます。開花日当日になると大きくつぼみが膨らみ、美しい花を咲かせるでしょう。

月下美人の花は、白く薄い花びらが重なり合っています。花の内側にびっしり並んだ先端の黄色いものが雄しべで、前面に長く突き出た放射線状のものが雌しべです。

海外では香水としても人気の香り

約10m離れていても匂いが分かるほど、香りの強い花として月下美人は知られています。その香りはやわらかく上品で、強いもののきつい香りではありません。ジャスミンに似た香りともいわれ、海外では香水に用いられるほど月下美人の香りは人気です。

花の姿が見えなくても、漂う香りで月下美人の開花が分かるといわれています。それほど月下美人の香りが強いのは、暗闇でもコウモリを惹き付けるためといわれています。コウモリは月下美人の花粉の運搬役を担ってくれる動物です。花の色が白いのも、暗闇で目立つのが理由とされています。

花言葉の意味や由来

花言葉の意味や由来

月下美人には、いくつかの花言葉があります。海外の花言葉には日本のものと異なる印象があり、より月下美人の魅力を多角的に知る手助けとなるでしょう。

あでやかな美人

月下美人の花言葉の一つが『あでやかな美人』です。華やかな見た目やコウモリを誘う魅力的な香りが、この花言葉の由来とされています。

花の名前にも花言葉にも美人と付くことから、女性らしい雰囲気を感じさせる花であることが分かります。『夜の女王(Queen of the night)』と直訳される英名が付けられているのも、その一例といえるでしょう。

はかなさや情熱も意味する

同じクジャクサボテン属の花の寿命は、一般的に約2~3日です。数日でも短いのに、月下美人の花の寿命は1日とさらに短くなります。1日といっても、花開くのは夜の数時間だけです。開花時間の短さに由来する花言葉も少なくありません。

その例が『はかない恋』『はかない美』です。生育期間の長さに対して開花時間があまりに短いことから、『ただ一度だけ会いたくて』という花言葉も月下美人にはあります。

これらの花言葉と対照的なのが、『秘めた情熱』です。月下美人のはかなさや短命さに焦点を当てた花言葉に対し、短時間に全力で咲き誇る力強さをこの花言葉では表しています。また、とても強く香る花の匂いも由来といわれています。

海外ではイメージの異なる花言葉も

日本での月下美人のイメージとは異なる花言葉も、海外にはあります。フランス語の『plaisir(快楽)』がその例です。月下美人の魅力的な外見や香りが由来とされています。

英語の花言葉は『dangerous pleasure(危険な快楽)』です。plaisirに比べて危険という言葉が含まれる分、その魅力に溺れたり依存したりする意味合いが含まれます。強い香りや華やかな見た目に惑わされ、快楽に浸って破滅してしまうようなイメージの花言葉といえるでしょう。

月下美人にまつわる俗説

月下美人にまつわる俗説

月下美人には、まことしやかにささやかれる俗説がいくつかあります。開花に関する俗説の内容と真偽を知り、月下美人の正しい知識を身に付けましょう。

同じ日に花が咲く

どの株も同じ日に花を咲かせる、という俗説が月下美人にはあります。日本に持ち込まれてから株分けや挿し木(さしき)によって数を増やしたクローンなら同じ時期に花を咲かせるだろう、というのが理由です。

実際は、株分けや挿し木で増えたからといって、すべての月下美人が同じ日に花を咲かせるわけではありません。クローンであっても個々が別の命を持つ植物であることに変わりなく、株ごとに体内時計を保有しています。栽培環境が違えば開花日も異なり、むしろ栽培環境が似ていないと同じ日に花を咲かせるのは難しいといえるでしょう。

1年に1回しか花が咲かない

広く知られる月下美人の俗説の一つが、1年に1回しか花を咲かせないというものです。ミステリアスな生態や一晩しか咲かない寿命の短さから、この説が定着したといわれています。

実際の月下美人の1年間の開花回数は、生育環境や株のコンディションによってさまざまです。育てやすい環境でうまく栽培できれば、開花期間のうちに約3~4回開花することもあります。反対に、1年間でまったく開花しない場合も珍しくありません。

月の満ち欠けと開花が連動している

月の満ち欠けと開花が連動し、満月や新月の夜に花を咲かせる、という俗説もあります。月下美人と別名の月来香が両者ともに月の字を含むことから、この俗説が広まったとされています。

実際の月の満ち欠けと月下美人の開花は連動していません。満月や新月以外の夜でも、花を咲かせます。

月の満ち欠けと同様に、夏の夜にしか月下美人は咲かないとする説もありますが、こちらも真実ではありません。夏に月下美人が咲くのは本当ですが、開花期間は6~11月頃と長いです。生育環境によっては、秋にも花を咲かせるでしょう。

育て方のポイント

育て方のポイント

月下美人の開花回数は、育て方によっても左右されます。育て方のポイントを押さえ、きれいな花を観賞する機会をより多く獲得しましょう。

5~9月に苗から育てよう

基本的に、月下美人は市販の苗から育てます。種は流通量が少なく、入手しづらいのが理由です。ホームセンターや園芸店で、葉にシワがなくしっかりしている株を選びましょう。

苗の植え付けは5~9月頃に行います。季節ごとに置き場所を変えるため、鉢植えで育てましょう。置き場所は、春・秋は半日陰、夏は明るい日陰、冬は室内です。葉焼けを防ぐため、真夏は寒冷紗(かんれいしゃ)や遮光ネットなどで日当たりを調整しましょう。

苗の植え付けは、鉢底ネットの上に鉢底石を約1/4入れた鉢に、土を約1/3入れます。鉢の中央に根鉢をほぐして腐った根を除いた苗を置き、土を敷き詰めれば完成です。土は鉢の縁から約2cm下まで入れましょう。

水やりのタイミングは季節によって違う

サボテンのように乾燥に強いイメージのある多肉植物でも、月下美人は水分を好む植物です。水やりのタイミングは、季節によって異なります。

4~10月頃の成長期は、土の表面が乾いたタイミングでたっぷり水やりしましょう。鉢底から水がこぼれるくらいの量が目安です。11~3月頃の休眠期は、完全に土が乾燥したときに月に約2~3回水やりします。水の量は土を湿らす程度で構いません。

季節に関係なく、多湿による根腐れには注意が必要です。茎や節にシワが寄っていたら、水やりを控えてしばらく様子見しましょう。水やりを控えても株がしなびるようなら、鉢から株を抜いて腐った根を取り除き、新しい土に植え直します。

肥料はリン酸やカリウムの多いものを

月下美人の肥料は、成長期にだけ与えましょう。休眠期の11~3月頃に肥料を与える必要はありません。

4~9月頃は、効果が長く緩く持続する『緩効性肥料』を月に1回与えます。粒状肥料や錠剤タイプを株元に置きましょう。10月は、すぐに効果の出る『即効性肥料』を隔週で与えます。こちらは液体肥料がよいでしょう。

肥料はリン酸やカリウムの多いものを与えます。注意が必要な成分は、チッ素です。チッ素の多い肥料を与えると、茎や葉ばかりが育ってしまい、花芽が付きにくくなります。月下美人を大きく育てるためには、肥料の成分にも目を配りましょう。

害虫や病気に注意

月下美人のかかりやすい病気の一つが、『すす病』です。カイガラムシやアブラムシなどの排泄物が原因といわれています。すす病にかかると、葉に黒い斑点が現れたり、葉が黒ずんだりします。

株の成長が遅れて枯れてしまう恐れがあるため、病変部に殺菌剤を塗布しましょう。病変部が小さければ、黒くなった部分を切除しても構いません。

すす病の原因となる『カイガラムシ』や『アブラムシ』は、月下美人に付きやすい害虫です。植物の栄養素を奪う『ハダニ』も、注意が必要な害虫といえます。

植物に異変があったら早急に対処しましょう。食用で月下美人を楽しむ場合は、できるだけオーガニックな殺虫剤を選ぶのがおすすめです。

植え替えや挿し木のやり方

植え替えや挿し木のやり方

月下美人を大きく育てるには、植え替えや剪定(せんてい)が必要です。また、株を増やすなら挿し木という方法があります。これらの作業について知り、月下美人を大きくしたり増やしたりしましょう。

大きく育てるためには植え替えが必要

月下美人は約1m以上の大きさにならないと開花しません。開花する大きさまで育てるには、約2~3年に1回のペースで大きい鉢に植え替える必要があります。

植え替えは、5~9月頃の温暖な時期にしましょう。植え替えの手順は苗の植え付けと同じです。茎の広がりを抑えるためにも、アジサイの栽培で使うあんどん支柱を立てて支えましょう。しっかり根が張るまでの約1カ月は、鉢を日陰に置きます。

植え替えのポイントは、今まで植えていた鉢に入っていた土を使い回すのではなく、新しい土を用意することです。水はけ・通気性のよい土を月下美人は好むため、『赤玉土:腐葉土=6:4または7:3』の混合土を使いましょう。

剪定は切り過ぎないように注意

混み合った茎や葉を切り落とし、外見を整えたり日当たりや通気性をよくしたりするのが剪定です。9月下旬~10月上旬頃に、剪定の一種である『切り戻し』をしましょう。

切り戻しでは、枯れた部分を根元から切り落とします。ただし、大きい株の方が月下美人は開花しやすいため、伸び過ぎた茎の切り戻しは最小限に留めましょう。

月下美人の根元から、『シュート』と呼ばれる棒状の茎が伸びてきます。シュートが伸びてきたら、先端の方を切りましょう。長くなり過ぎると花芽が付きにくくなるからです。切ったところから新たな茎が伸びて花芽が付きます。ただし、根本からシュートを切らないよう注意しましょう。

挿し木をすれば増やせる

月下美人を増やすなら、挿し木で増やすのがおすすめです。挿し木の適期は5~9月頃で、植え替えや切り戻しで切り落とした茎を使うとよいでしょう。

まずは約15~30cmの長さに切った茎を、約1週間陰干しで乾燥させます。乾いた赤玉土や鹿沼土を入れた育苗ポットに、陰干しした茎を浅めに挿しましょう。風通しのよく明るい日陰に育苗ポットを置きます。

水やりを始めるのは、約1週間経ってからです。その後も約10日に1回のペースで、土を湿らせる程度に水やりをします。発根までは、早ければ約2週間、だいたい約1カ月です。ある程度根が伸びたら、肥料を含まない土に植え替えましょう。約5cm新芽が伸びたら、肥料を与えます。

月下美人の気になる疑問

月下美人の気になる疑問

月下美人の基本情報や育て方のポイントを把握し、知りたいことがさらに増えた人もいるのではないでしょうか。種類や長く楽しむ方法など、月下美人の栽培を考えている人が気になる疑問を解決しましょう。

代表的な種類

月下美人は原種が約20種類、交配種が約10種類あります。原種の花びらはいずれも白色で、カラフルな花びらの品種は近縁種やその園芸品種です。

細長い花びらが特徴的な『宵待孔雀(ヨイマチクジャク)』は、雌しべの花柱が赤色です。『歌麿呂美人(ウタマロビジン)』は月下美人と宵待孔雀の交配種で、約17~18cmと月下美人より小さい花を咲かせます。

『姫月下美人(ヒメゲッカビジン)』は、香りの強い品種です。月下美人は数時間の寿命なのに対し、翌日の日中まで姫月下美人は花を咲かせます。月下美人と姫月下美人の交配種である『満月美人(マンゲツビジン)』は小ぶりかつ華やかな花が特徴です。

花は食べられる?

あまり知られていませんが、月下美人の花は食べられます。天ぷらやおひたしなどの調理方法がありますが、シンプルなのはさっと湯がいてポン酢でいただく方法です。つぼみの下部を切るだけで下ごしらえは終わるため、とにかく手間がかかりません。

月下美人は古くから薬用でも利用されてきました。呼吸器系のトラブルや体脂肪・高血圧などに効果があるとされていて、台湾では乾燥した花を使った薬膳スープが作られます。

つぼみや花びらだけでなく、熟した実も食用可能です。月下美人の実は、同じサボテン科のドラゴンフルーツに似た見た目をしています。生の実はサクサクとした触感で、ほんのり甘い味がするといわれています。

花を長く楽しむ方法

月下美人は非常に開花時間の短い花です。アルコール漬けにすれば、美しい花を長く楽しめます。本来は一晩しか見られない月下美人の花を、うまくいけば数年間楽しめるでしょう。

必要なものは、透明な瓶とアルコールだけです。瓶の大きさは、開花状態の花が入るものを用意しましょう。お酒を入れた瓶に、開花後に切り落とした花を入れるだけです。アルコール漬けにすることでしぼみかけた花が復活しますので、まずは短い花の寿命をしっかり楽しんでから漬けましょう。

アルコール漬けに使うお酒は、アルコール度数35度以上で透明なものがおすすめです。果実酒づくりに用いられる焼酎甲類(ホワイトリカー)やテキーラ・ジンなどが適しています。

まとめ

花を咲かせるためには、月下美人の株を大きく育てる必要があります。そのためには、正しい育て方を把握することが重要です。育て方を知れば、自分に育てられるかどうかや元気に育っているかどうかを判断できます。

少し育て方にコツがいるものの、うまく育てれば暗闇に浮かぶ白く幻想的な月下美人を鑑賞できます。アルコール漬けや料理にすれば、開花日のあとも花を楽しめるでしょう。月下美人の特徴や育て方を知り、ぜひ自宅で栽培してみましょう。

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