ナツツバキ(夏椿)の花言葉|花名の由来や別名は?沙羅双樹とは違う花?
梅雨から初夏にかけて白く可愛らしい花を咲かせる夏椿は、樹皮も美しく庭木としても人気です。夏椿には有名な別名があり、平家物語とも関係の深い花です。この記事では、夏椿の花名の由来や別名、平家物語に登場する沙羅双樹との関係についてご紹介します。
夏椿の花言葉
夏椿の花言葉は「愛らしさ」、「はかない美しさ」です。
夏椿の花言葉の由来
夏椿は朝に美しい白い花を咲かせ、夜には散ってしまう一日花のため、「はかない美しさ」という花言葉が生まれました。
夏椿の英語での花言葉
夏椿の英語での花言葉はありませんが、日本の夏椿の花言葉を英語にすると「loveliness(愛らしさ)」、「transient beauty(儚い美しさ)」となります。
夏椿の花名の由来
夏椿の花名は椿の花によく似ており、夏に咲くことが由来です。夏椿は6月~7月初旬に開花し、椿は9月~4月頃に開花します。
夏椿の英語の名前
夏椿の英語の名前は「Japanese stuartia」、学名は「Stewartia pseudocamellia」です。
夏椿の英語の名前の由来
学名の「Stewartia pseudocamellia」の「Stewartia」はイギリスの第3代ビュート伯爵ジョン・ステュアートの名前が由来です。彼は18世紀にイギリス首相となり、植物学の研究でも有名でした。
夏椿が誕生花なのはいつ?
夏椿が誕生花の日は6月16日、6月22日、7月15日です。
夏椿ってどんな花?
夏椿は日本や朝鮮半島南部が原産の植物です。一日花のため朝に花を咲かせ、夜には椿と同じように花ごとぽとりと落ちます。落葉樹で秋には紅葉します。紫陽花と同じように梅雨の時期に咲く花です。
夏椿の基本情報
科・属 | ツバキ科・ナツツバキ属 |
和名 | 夏椿(ナツツバキ) |
英名 | Japanese stuartia |
学名 | Stewartia pseudocamellia |
花の色 | 白色、ピンク色 |
原産地 | 日本、朝鮮半島南部 |
開花時期 | 6月~7月初旬 |
夏椿の花の色
夏椿の花の色は基本的に白色です。近年は品種改良が進み、ピンク色の夏椿も存在します。
夏椿の別名
夏椿の別名は「シャラノキ(沙羅の木)」です。沙羅の木の名前の由来である沙羅双樹は、釈迦が亡くなった時に近くに2本生えていたとされ、三大聖木の一つです。
沙羅双樹と夏椿は違う?
沙羅双樹はフタバガキ科・コディアエウム属の落葉性高木で、インドに自生しています。樹高は30mほどで、建材にも使用される木です。夏椿と沙羅双樹は異なる植物ですが、寒さに弱く日本では育たない沙羅双樹の代用として、夏椿を「シャラノキ(沙羅の木)」と呼んだといわれています。 タイやミャンマー、スリランカでは、沙羅双樹と異なる「ホウガンノキ」を沙羅双樹としているので、沙羅双樹が仏教で大切に扱われている木だということがよくわかりますね。 ちなみに沙羅双樹が日本で唯一見られるのは、滋賀県草津市の水生植物公園みずの森です。
夏椿と似ている植物
夏椿に似ている植物に、ヒメシャラや椿、寒椿があります。
ヒメシャラ
ヒメシャラは夏椿ととても良く似た白い花を咲かせ、日本原産です。違いは花の大きさで、夏椿の花が5~6cmなのに対して、ヒメシャラの花は2~3cmです。花びらは夏椿のほうがひらひらしており、葉が大きいのも夏椿です。夏椿の剥離した幹がまだら模様になるのに対し、ヒメシャラの幹は剥離しても赤褐色で均一の色です。 また、ヒメシャラの開花時期は6月~8月です。
椿
椿は9月~4月頃に開花します。寒さに強く、落葉樹の夏椿と違い常緑広葉樹です。また、色や形の異なるたくさんの品種があります。葉は厚みがあり周囲が細かくギザギザした形になっています。
寒椿
寒椿は椿と山茶花をかけ合わせた園芸品種です。サザンカとよく似ているため、サザンカの一種として扱われることもあります。12月から3月が開花の時期で、公害に強く街路樹などにも利用されています。寒椿の花の色は白、ピンク、赤です。寒椿は雪の中でも咲いているのを見ることができます。
夏椿と同じ科の花
夏椿と同じツバキ科には、サザンカやチャノキ、サカキなどがあります。
サザンカ
サザンカ(山茶花)の名前は中国語の「山茶(さんさ)」に由来します。山茶はツバキ類のことです。サザンカは「サンサカ」がなまってサザンカと呼ばれるようになったと言われています。10月~12月に開花し、赤、白、ピンクなどの花を咲かせます。 サザンカの花言葉は「ひたむきさ」、「困難に打ち克つ」です。
チャノキ
チャノキはツバキ科ツバキ属の常緑低木で、10~11月に白い花を咲かせます。緑茶、紅茶、ほうじ茶、烏龍茶などのお茶は、製法が異なるものの全てチャノキの葉や茎、芽から作られます。平安時代に中国から日本に伝わり、鎌倉時代にはチャノキの栽培と喫茶の風習が生まれました。お茶を作るために使用するのはもちろん、観賞用の園芸品種も存在します。 チャノキの花言葉は「追憶」、「純愛」です。
サカキ
サカキはツバキ科(サカキ科)サカキ属の常緑樹です。葉には厚みがあり、長さは8cm前後です。5~8月に小さな白い花を咲かせます。サカキの葉がついた枝は玉串として神事に使われます。家庭の神棚に捧げられることもあり、地方では庭にサカキを植える家もあります。 サカキの花言葉は「神を尊ぶ」、「控えめな美点」、「揺るがない」です。
夏椿と平家物語の関係
平家物語の冒頭には、こんな文章があります。 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」 これは「祇園精舎の鐘の音は、この世のすべては絶えず変化していくものだという諸行無常の響きが含まれている。沙羅双樹の花の色は、どれほど勢いが盛んな者も必ず衰えるという道理を示している。」という意味です。 この文章に登場する沙羅双樹は釈迦が亡くなった時に近くに生えていた沙羅双樹ではなく、夏椿のことではないかといわれています。沙羅双樹は暑さに弱いため日本では育たず、日本では夏椿をシャラノキと読んで沙羅双樹の代わりとして扱っていたのです。