ウチョウランの育て方とコツ|花の特徴や種類・花言葉も解説
ウチョウランは山の斜面などに自生していましたが、現在は野生のものはあまり見られません。交配などの園芸が進み、最近は丈夫なウチョウランが出回るようになりました。和名では「羽蝶蘭」、羽のような形の魅力的な花です。栽培方法とコツを紹介します。
ウチョウランとはどんな花?
ウチョウランはラン科の花、蝶が羽を広げたようなかわいらしい形で、薄い紫や白やピンクの花を咲かせます。もともとは日本が原産で、山地の岩璧などに自生していたため、草丈は5~20cmと低めです。
山野草ブーム時の乱獲により野生のものはほとんど見かけなくなりました。現在では品種改良された園芸用のものが多く出回り、ウチョウランの栽培が手軽にできるようになりました。球根性の多年草なので、夏や冬を上手に乗り切ると翌年も開花が楽しめます。
ウチョウランの特徴
ウチョウランは、岩璧に自生していた山野草です。茎はまっすぐ伸び、5~20cmの茎との先に小さな花10個程度をつけます。花びらの唇弁(しんべん)といわれる部分には、赤紫色の斑紋(はんもん)があるのが特徴です。葉は細長い形で3~10cmほどの長さです。球根から発達した根は楕円形の魂根とひげ根になります。
冬は球根の状態で越しますが、上手な管理で翌年も花が咲きます。鉢などではそのままにしておくと、分球してたくさんの花を咲かせることもできます。
ウチョウランの基本情報
ウチョウランの基本情報は以下のとおりです。
科・属 | ラン科・ウチョウラン属 |
和名 | ウチョウラン(羽蝶蘭) |
英名 | Orchis graminifolia) |
学名 | Ponerorchis graminifolia |
花の色 | 薄紫、白、ピンク |
原産地 | 日本 |
開花時期 | 6~8月 |
特徴 | 耐暑性、耐寒性は普通 |
ウチョウランの名前の由来と花言葉
ウチョウランは和名の「羽蝶蘭」のとおり、花びらが羽を広げた蝶のような美しい形をしている、咲いている様子が蝶が岩璧に止まっているように見えることからついた名前です。花言葉は「静かな愛情」や「技巧的」です。
「静かな愛情」はウチョウランが岩璧にひっそりと静かに咲いている様子からついたものでしょう。「技巧的」からは岩璧の険しい斜面でも、しがみつくように器用に花を咲かせている光景からついた花言葉です。
ウチョウランの種類・品種
ウチョウランはラン科 ウチョウラン属を総称した Ponerorchis (ポネロルキス) 原種に属しています。 Ponerorchis (ポネロルキス) 原種には、ウチョウラン、アワチドリ、クロカミラン、サツマチドリ、ヒナチドリ、スズチドリ、があります。
ウチョウラン
ウチョウラン (graminifolia)は、本州北部から九州に自生が確認されています。岩場の斜面ばかりでなくコケの中に自生していることがあり、開花期は5~8月、1つの茎に10個くらい、この種類のなかでは少し大きめの花を咲かせます。涼しい場所に良く育ちます。
アワチドリ
アワチドリ(suzukiana)は、千葉県の房総半島に自生し、開花期は6~7月です。水気の多い場所を好み、葉の枚数も多くなります。1つの茎に100個ほどの花をつけることもあり、ウチョウランより小さめの花です。日中の暑さには強いですが、夜は涼しい環境を好みます。
クロカミラン
クロカミラン (kurokamiana)は、佐賀県黒髪山周辺に自生が確認されています。開花期は5~6月です。細い茎に15個ほどの小さめの清楚な花を咲かせます。品種改良があまり行われていないため、地元では郷土の花として親しまれています。
サツマチドリ
サツマチドリ (micropunctata)は、鹿児島県下こしき島で発見された品種です。開花は6~7月です。山間部の岩場斜面で、西日が強く当たる場所に自生しています。8月には地上部は枯れ、夏に休眠するものも見られるそうです。
ヒナチドリ
ヒナチドリ (chidori)は、北海道から本州にかけて自生しているのが見られます。開花期は6~7月です。ブナ・トチ・カエデなどの樹木やコケなど他の植物と一緒に自生しています。1本の茎に10~15個小さな花を咲かせます。夏の暑さに弱いので都会で栽培するのは難しそうです。
スズチドリ
スズトドリは、ウチョウランとの交配で生まれた品種です。北海道の一部に自生しているものは別名でチャボチドリといわれています。
ウチョウランの栽培環境
ウチョウランの自生している環境をよく観察しましょう。ウチョウランは明るい半日陰で、風通しが良く、雨に当たらないところがよいでしょう。暑さに強い品種も夜は涼しいところを好みます。夏の栽培方法の工夫が大切ですね。冬は球根を掘り上げ、日が当たらないような袋に入れて休眠させます。
ウチョウランの置き場所を決める
ウチョウランの鉢を置く場所や植える場所は、樹の根本など直射日光が当たらず適度に明るく、雨や強い風も防げる場所がいいでしょう。
ウチョウランの用土を準備する
ウチョウランの栽培に使う土は、水はけのよい土、市販されているものでは「山野草の土」を使うとよいでしょう。
土を自分で作るときは、硬質鹿沼土・桐生砂・軽石を等量に配合した水はけのよい土を作ります。適度な湿気を与えるときは、細かいチップ材やコケを2~3割程度混ぜるのもおすすめです。
ウチョウランの種を準備する
ウチョウランの種は秋に採取し、鉢には2~3月に撒きます。種を親株と同じ土を用い植えます。段ボールをちぎって土に混ぜたり、鉢の内側に沿って差し込んだりして種の生育を保護します。
ウチョウランの育て方・栽培方法
ウチョウランは山野草の育て方で栽培します。自生している環境と同じになるよう工夫しましょう。日光、温度、水やり、越冬の仕方がポイントになるでしょう。越冬は鉢ならばそのままでも大丈夫です。増やすのもかんたんですので、楽しみながら栽培してみましょう。
ウチョウランの種まきや苗木の植え付け時期と方法
ウチョウランの種まきや苗木の植え替え時期は2~3月頃です。
種の採取は実が黄色くなる9~10月頃がベストです。サヤごと取ってビニール袋に入れます。こぼれ落ちても大丈夫なようしてビニール袋の中で採取します。取った種は、2~3月になったら親苗と同じ土に植えます。2~3年はそのままの状態で栽培します。苗木の植え替えも2~3月ころです。
球根を植える時期は、11~3月頃です。用土に指先で穴を作り球根を傷めないようにやさしく入れます。その上に土を5mm~1cm程度かけます。過湿を避けるため浅めに植えるのがコツです。